引退迫る2階建て新幹線E4系 目に焼き付けたい「高い車窓」徹底ガイド

高崎以北も「上越ならでは」の見どころが

(4)高崎観音:戦没者慰霊のために建てられた高崎のシンボル
E席

 高崎駅が近付くと、E席側の小高い丘陵地のてっぺんに白く巨大な観音像が見えてきます。あれは高崎白衣大観音。高崎観音の愛称で親しまれる全長41.8mの仏像で、標高190mの観音山にあります。全国にはこうした巨大仏像が数多くありますが、その多くがバブル時代に建てられたのに対し、高崎白衣大観音は戦前の1936(昭和11)年に建立されたもの。日清戦争以来の陸軍の精鋭といわれた高崎第15連隊の戦没者の慰霊が目的でした。その第15連隊は、太平洋戦争中満州から南方のパラオに転戦し、一部の部隊がペリリュー島の戦いに投入されて玉砕しています。

 近年、各地の巨大仏像が、近年管理が行き届かず放置されたり撤去されたりするケースが増えているなか、高崎観音は今も高崎のシンボルとして高崎の街と新幹線を見守っています。

(5)沼田の河岸段丘:地理の教科書にも登場する美しい地形
A席

 上毛高原駅の手前、赤谷川を渡るところで、A席側から日本一美しいともいわれる群馬県沼田市の河岸段丘を見晴らすことができます。河岸段丘とは、川の流れが左右の土地を削り、その土地が隆起することで生まれる階段状の地形です。沼田市の利根川とその支流である片品川の流域に広がる河岸段丘は、その規模、分かりやすさ、見た目の美しさから教科書にもよく掲載されています。新幹線からは、地形が階段状になっている様子は見づらいですが、山に挟まれた谷に真っ平らな土地が広がっている様子を観察できます。晴れていれば赤城山も見晴らせ、上越新幹線随一のビュースポットです。ただし、5秒ほどで通過してしまうのでお見逃しなく。

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上毛高原駅到着直前、一瞬のパノラマ。山地に挟まれた起伏のない平地が段丘面で、奥の方に木々がベルト状に連なっているのが段丘崖。奥には赤城山も見える。高崎~上毛高原間でA席側から(栗原 景撮影)。

(6)八海山と魚野川:日本百名山を見晴らす
A席

 高崎~長岡間はトンネルがほとんどを占めていますが、それでも各駅の前後には上越地方の美しい風景を楽しめる区間があります。山が一番きれいに見えるのは浦佐駅付近。日本百名山にも数えられる越後駒ヶ岳と、清酒の名前としても知られる八海山が列車の目の前に美しい姿を見せてくれます。

(7)新潟交通電車線跡:21世紀を前に廃止された鉄道の線路敷が新幹線とクロスする
両方、どちらかというとA席

 長岡からは、新潟らしい広大な水田の中を走ります。燕三条駅を発車し新潟駅に向けてしばらく進むと一直線に延びる畔道のようなものが見えます。これはかつて新潟市内の白山前と弥彦線の燕駅を結び、1993(平成5)年7月末限りで廃止された新潟交通電車線の跡。E席側には、遊歩道化され、ホームが保存された小中川駅跡もちらりと見える……はずでしたが、防音板が増設されてしまい、こちら側はほんの一瞬しか見えません。A席側は、農道に挟まれた畦がまっすぐ延び、水路を渡っていた橋台跡も見えます。

 新潟交通電車線は、新潟市内側の白山前~東関屋間と月潟~燕間が先に廃止され、後に東関屋~月潟間が廃止されましたが、廃線跡らしい遺構はこちらの月潟~燕間に多く残っており、月潟駅はボランティアの手によって今も保存されています。

※ ※ ※

 ほかにも、上越新幹線には他路線にはない車窓がたくさんあります。平屋のE2系やE7系では防音壁に遮られて、E4系ほどの眺望は望めません。上越新幹線を使う機会があれば2階建て新幹線からの車窓を目に焼き付けておきたいものですね。

【了】

見納め…「2階席からの眺め」で新潟へ!(12枚)

Writer: 栗原 景(フォトライター)

1971年、東京生まれ。旅と鉄道、韓国を主なテーマとするフォトライター。小学生の頃から各地の鉄道を一人で乗り歩き、国鉄時代を直接知る最後の世代。出版社勤務を経て2001年からフリー。多くの雑誌や書籍、ウェブに記事と写真を寄稿している。主な著書に『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』(東洋経済新報社)、『テツ語辞典』(誠文堂新光社/共著)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 1階席からの眺めも見納めなのでそちらもよろしく。