海上監視どう変わる? 無人機の試験に50億円計上する海自の思惑 引退進む哨戒機
無人機=省人化 必ずしもそうじゃない? 考えられる導入機種の候補は
UAVを導入しても、そこまでの省人化は期待できないとの声も聞かれます。戦術航空士やソナー員などは必要ないとしても、操縦士については有人機と比べ少人数で済むものの必須であり、整備などにあたる地上の支援要員に関しては有人機と同様に必要となるためです。
しかし、陸上自衛隊が採用した「スキャンイーグル」や、前述した海上保安庁が導入する予定の「シーガーディアン」の原型である「ガーディアン」は、アメリカ軍やインド軍などでは運用や整備をメーカーが担当し、軍は飛行時間や収集したデータの量に応じた金額を支払うといった運用方法も採られています。防衛省にはこのような契約をした前例がなく、またそうした運用を検討しているのかも定かではありませんが、この方法ならば省人化は可能であると考えられます。
海上自衛隊が令和4年度に計画しているUAVの試験運用では、長時間の広域滞空監視や有人機との連携が検証される予定です。有人哨戒機と連携するUAVとしては、アメリカ海軍においてP-8A「ポセイドン」哨戒機と連携するMQ-4C「トライトン」が実用化されています。
しかしMQ-4C「トライトン」は対潜作戦での使用を想定しておらず、また価格も高いことから、おそらく海上自衛隊は違う機種を想定していると推察されます。
筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)としては、海上自衛隊が検討するのは、おそらく潜水艦を探知する「ソノブイ」のランチャー(投下装置)などを搭載する計画と哨戒機との連携構想があり、かつMQ-4C「トライトン」に比べれば価格も安い「シーガーディアン」や、イスラエルのエルビット・システムズが開発した「ヘルメス900マリタイム」といった、「MALE」(中高度長時間滞空)に分類される機種ではないかと考えています。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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