列車1本の代替にバス11台!? 「くま川鉄道」改めて知るその役割 豪雨被害から再開へ

ローカル線の代替バスに20数台体制 まさに“ひっきりなし”

 代替バスにより球磨地域の通学はどう変わったのか、実際の朝晩のラッシュの様子を“見たまま観察”してきました。

「くま川鉄道 代替輸送バス」の時刻表には、鉄道の列車番号とともにバスの台数を示す「大1・小1」(大型車両1台・小型車両1台)などの数字が記載されています。最もバスの出動が多くなるのは湯前を7時10分に出発する列車番号「4D」の代替で、始発の時点では大型バス2台、ここに多良木駅で大型2台・小型2台が追加され、あさぎり駅ではさらに大型2台が追加、合計8台での運行と記載されています。なおこの便、一時期は11台のバスを稼働させる旨が明記されていましたが、今でもそれに近い台数が動いているようです。

 また、あさぎり駅では各駅の代替停留所に停車するバスとは別に、鉄道と違うルートをたどる「人吉高校直行便」「球磨工業高校直行便」が発車していきます。そして各駅停車便は球磨中央高校(肥後西村駅の代替え停留所扱い)で同校の敷地内に乗り入れ、玄関前のロータリーで生徒の降車扱いを行います。

 球磨中央高校のロータリーでは、バスの定刻である朝7時58分の6分前から九州産交バスの大型車両や、つばめ交通はじめ地元バス会社の小型車両など、数えた限り9台が次々と敷地内に進入し、全てのバスが出発した時には10分以上が経過していました。なお同校はもともと生徒の8割が鉄道で通学していたため、昨年7月の災害発生時には臨時休校を余儀なくされたのだとか。

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平日朝の球磨中央高校玄関前の様子。大型バス6台、小型バス2台が校地内を通過した。許可を得て撮影(宮武和多哉撮影)。

 他の便でも、朝の「2D」代替(湯前駅6時発)、夕方の「23D」「25D」代替(人吉温泉発)などで大型バスを中心に4~6台で対応しています。相良藩願成寺駅が最寄りとなる人吉高校の代替バス停(九州道 人吉IC南東)では、夕方4時台にバスを待ち構える数十人の高校生の行列が途切れず、時刻表に記載されていない2台の小型車両がプラスで運用についていました。

 その他の運行便も含めて、平日朝には上り・下りで少なくとも20台以上のバスが動いているようで、産交バス人吉営業所の敷地いっぱいにバスが停車している様子からも、代替バスのために輸送能力をフル活用している様子が伺えました。

【写真レポ】これぞ「総力戦」通学支えるくま川鉄道代替バス

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コメント

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5件のコメント

  1. 壮大な負の実験と言われたえちぜん鉄道の事例と言い、輸送力は優秀なんですが、結局全体でどう?と言われると、通勤通学が終わってしまうとスッカラカン。
    ラッシュ時間帯も行きは超満員でも逆方向は空気輸送なわけで、むしろ通勤通学が終われば観光とかコミュニティバスを運転して金稼ぎができるバスのほうが優秀じゃないかと思われる一面もあるんですけどね。

    効率的に学校を結ぶっていっても、そもそも鉄道ができた後に駅の近くに高校ができたわけで、そりゃ最短経路になりますわな。
    3セクだからこそ存続の決定がなされたわけであって、もしJR路線だった場合、嫌がったでしょうね。

  2. 筆者はこの復活劇を美談にしすぎており、問題意識が感じられない。くま川鉄道は、通学需要が高い路線だから復活できたにすぎないし、他の赤字ローカル線とは全く違うことを強調してほしかった。
    地元の人が駅を整備しつづけたことも大事なことではあるが、今の利用者の8割を占める高校生、つまり普通自動車の運転免許を持つことができない世代が80歳になるまで地元の高校生であり続けるわけではない。仮にバスを何台も出して通学需要を賄う必要があり、今後それが覚束ないのであれば、高校がバイク通学を認めてバス需要を軽減させればいいのである。
    逆説的に言えば、高校生以外にとっては、この路線が廃止されてもさほど悲しくはないのである。むしろ、都会の鉄道ファンと称する人種が存続させろ、復活させろ、廃止するなとローカル線の浪漫に任せて喚き散らすだけにすぎない。そんなに路線に残ってほしいのならば、その土地に引っ越して毎日乗ればいいのに。

    • 確かにローカル線でも、混んでる路線や区間はあります
      しかし、全路線や全区間のごく一部の例を引き合いに出すのは
      どこかの偏向報道を流すマスメディアとなにが違うんでしょう
      JR西の自動運転BRTの実用化を加速して、過疎路線をバンバン置き換えて欲しいですね

  3. 沿線に高校がうまい具合に固まっている」これが全てでしょうね

    もともと高校の再編が原因の通学ラッシュは問題になってたし、産交もこの時点で乗客を奪う動きを取らなかったから、このレベルの片側輸送はバスにとって美味しくなかったんでしょう

    今回の代行バスでも、産交は増便を断ったり協力的ではなかったし
    (膨大な昼間の中ヌキ休が組合に問題視されたのと、単純に運転手が集まらなかった。期限付きでどうにかかき集めたから、鉄道再開とともに他の拠点に帰ってしまう)
    ここまでの台数が必要になる事情が理解できました。やっぱり道路事情やバス事情を「実際に見る」のが一番分かりやすいですね

    あとくま川鉄道の場合は、通学定期が安すぎ。自治体負担で補助入れるなり値上げするなりしないと、経営としては不安定なままじゃないか?他でも言えることだけど

  4. 大半は国の費用で復旧というところがどうしても、納得いきません。
    せめて、復旧後に通学定期代の大幅値上げなどで、沿線受益者にも負担してもらいたいです。