列車1本の代替にバス11台!? 「くま川鉄道」改めて知るその役割 豪雨被害から再開へ
バス営業所も大被害 鉄道あってこその地域
被災したのは鉄道だけではありません。代替バスの多くを担う産交バス人吉営業所も、氾濫によって27台中25台のバスが水没しています。いま運行されている路線バスの車両も、三角(みすみ)や松橋(まつばせ)など県内にある営業所の古いバスが目立ち、まだ立て直しの途上にあるといえそうです。
一方、鉄道代替バスの運用についている貸切バスは新車が目立ちますが、球磨地方の主要産業である観光が復活してきており、取材した日もレジャー利用に数台が出動していました。高齢化などでバスに限らず労働人口そのものが限られている球磨地方で、朝晩のわずかな時間のみ大掛かりとなるバス輸送体制の難しさも、鉄道の早期復旧の判断につながったのではないでしょうか。
また現地では、球磨地方の通学事情に合った鉄道の線形の良さも再認識させられました。被災した球磨川第四橋梁の前後では、球磨川水系の数本の川が合流する広い三角州を渡る形で、人吉市街地がある球磨川北岸と他の自治体が連なる南岸を結んでいますが、並行する国道219号は球磨川北岸から遠ざかるようなルートをたどります。鉄道のルートをトレースする代替バスは、球磨川を渡る区間で、大型車両の運行に適さないクネクネとした道路を進むなど、その運行はスムーズとは言い難いものです。
“くま鉄” の「地形的にネックになる場所を鉄橋で短絡している」「複数の高校を最短距離で結んでいる」という利点は、再開に向けた工事が続く人吉温泉~肥後西村間があってこそ。この利点の価値が全線復旧につながったとも言えますが、背景にある住民の“熱意”も大きいでしょう。
というのも、鉄道の設備周辺を清掃する人々の多さに驚かされたからです。宿泊で滞在した多良木でも住民の方がこまめに駅清掃を行っているそうで、1年以上も運休が続く鉄道がここまで保たれているのも珍しいのではないでしょうか。被災の度合いもあり単純に比較はできませんが、同様に被災し、ほとんどの設備が放置されているJR肥薩線の現状と、あまりにも対照的です。人吉・球磨地方における“くま鉄” の存在の大きさこそが、鉄道を復活に導いた何よりの原動力なのかもしれません。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
壮大な負の実験と言われたえちぜん鉄道の事例と言い、輸送力は優秀なんですが、結局全体でどう?と言われると、通勤通学が終わってしまうとスッカラカン。
ラッシュ時間帯も行きは超満員でも逆方向は空気輸送なわけで、むしろ通勤通学が終われば観光とかコミュニティバスを運転して金稼ぎができるバスのほうが優秀じゃないかと思われる一面もあるんですけどね。
効率的に学校を結ぶっていっても、そもそも鉄道ができた後に駅の近くに高校ができたわけで、そりゃ最短経路になりますわな。
3セクだからこそ存続の決定がなされたわけであって、もしJR路線だった場合、嫌がったでしょうね。
筆者はこの復活劇を美談にしすぎており、問題意識が感じられない。くま川鉄道は、通学需要が高い路線だから復活できたにすぎないし、他の赤字ローカル線とは全く違うことを強調してほしかった。
地元の人が駅を整備しつづけたことも大事なことではあるが、今の利用者の8割を占める高校生、つまり普通自動車の運転免許を持つことができない世代が80歳になるまで地元の高校生であり続けるわけではない。仮にバスを何台も出して通学需要を賄う必要があり、今後それが覚束ないのであれば、高校がバイク通学を認めてバス需要を軽減させればいいのである。
逆説的に言えば、高校生以外にとっては、この路線が廃止されてもさほど悲しくはないのである。むしろ、都会の鉄道ファンと称する人種が存続させろ、復活させろ、廃止するなとローカル線の浪漫に任せて喚き散らすだけにすぎない。そんなに路線に残ってほしいのならば、その土地に引っ越して毎日乗ればいいのに。
確かにローカル線でも、混んでる路線や区間はあります
しかし、全路線や全区間のごく一部の例を引き合いに出すのは
どこかの偏向報道を流すマスメディアとなにが違うんでしょう
JR西の自動運転BRTの実用化を加速して、過疎路線をバンバン置き換えて欲しいですね
沿線に高校がうまい具合に固まっている」これが全てでしょうね
もともと高校の再編が原因の通学ラッシュは問題になってたし、産交もこの時点で乗客を奪う動きを取らなかったから、このレベルの片側輸送はバスにとって美味しくなかったんでしょう
今回の代行バスでも、産交は増便を断ったり協力的ではなかったし
(膨大な昼間の中ヌキ休が組合に問題視されたのと、単純に運転手が集まらなかった。期限付きでどうにかかき集めたから、鉄道再開とともに他の拠点に帰ってしまう)
ここまでの台数が必要になる事情が理解できました。やっぱり道路事情やバス事情を「実際に見る」のが一番分かりやすいですね
あとくま川鉄道の場合は、通学定期が安すぎ。自治体負担で補助入れるなり値上げするなりしないと、経営としては不安定なままじゃないか?他でも言えることだけど
大半は国の費用で復旧というところがどうしても、納得いきません。
せめて、復旧後に通学定期代の大幅値上げなどで、沿線受益者にも負担してもらいたいです。