日本唯一「クルマで通れるケーブルカーの踏切」が特殊な件 「ロープに注意」看板の意味
地面に這わせたケーブルで車両引っ張るケーブルカーには原則、安全上の理由などから踏切がありませんが、中には例外の路線も。そのうち生駒ケーブルには、日本で唯一、クルマも通れる踏切が存在します。足元はどうなっているのでしょうか。
注意看板も「ならでは」のもの?
日本最古のケーブルカーは、近鉄が運行している生駒鋼索線(生駒ケーブル)です。生駒ケーブルは、1918(大正7)年に鳥居前~宝山寺間が開業。1929(昭和4)年には、宝山寺~山上間が開業しています。
2つの路線が接続しているケーブルカーは珍しいのですが、特に鳥居前~宝山寺間は沿線に多くの住宅が立ち並び、こちらもケーブルカーでは珍しく通勤・通学需要があります。そのため、朝夕を中心に“ラッシュ”も見られます。
ほかにも、生駒ケーブルには特筆すべきものがあります。それはクルマの通行が可能な踏切が設置されていること。そもそも「ケーブルカーの踏切」自体がとても珍しい存在ですが、鳥居前~宝山寺間に3か所あるうち最も宝山寺駅寄りの踏切は、大型を除くクルマも通れます。
レールのそばを這わせたケーブルが車両を引っ張るケーブルカーにとって、ケーブルは生命線なので、原則として踏切は設置されません。万が一にもクルマが引っかかり、ケーブルが切断されるような事故が起きれば一大事です。同じく近鉄が運行する西信貴鋼索線(西信貴ケーブル)にも踏切がありますが、こちらは歩行者用のみです。
では、踏切部分はどう対処しているのでしょうか。近づいてみると、横断するクルマや歩行者がケーブルに引っかからないよう2本のレールの間、ケーブルが通る路面にも溝があります。さながらレールが3本あるような格好です。横断者の安全はさることながら、切断などされないようケーブルも守られている印象でした。
観察していると、往来するクルマは一時停止・徐行しながら、一般的な踏切と同じように通過していました。踏切の脇に「ロープに注意」といった看板があるのも、ケーブルカーならではかもしれません。
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Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
踏切部分の立体交差化はできないのでしょうか。