変化した「駅弁大会」 高単価商品が続々のワケ “現地でしか買えない”だけでない価値追求

稀に起こるシンデレラストーリー 駅弁大会は「実力テストの場」?

 また、国内最大規模の「全国有名駅弁とうまいもの大会」参戦をきっかけに、一気にその名を知られるケースもあります。

 今回「新作駅弁の競演」で「海の極み弁当」を投入する福島県のいわき駅弁「小名浜美食ホテル」は、この大会に初めて参加した2019年に「うに貝焼き食べ比べ弁当」が販売数3位を記録し、その後の出店が大幅に増加したといいます。なお筆者(宮武和多哉:旅行・乗り物ライター)も同年の3日目早朝から行列に並んでいましたが、スマートフォンで大会情報を検索している人々の「今年参加の“いわき駅弁“が美味しいらしい」という会話が「ほんとに?」「全然聞いたことないけど美味しいの?」と徐々に広がり、開店直後から同社ブースの行列がみるみる伸びていったのを目撃しています。

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小名浜美食ホテルの「海の極み弁当」(宮武和多哉撮影)。

 ローカルブランドとしての日本一を目指し、数年途絶えていたいわき駅弁をJRいわき運輸区から要望を受けて復活させた同社にとって、「元祖有名駅弁とうまいもの大会」の参加は、その後の催事出店が増加する“シンデレラストーリー”の始まりだったのかもしれません。もちろん、遠洋漁業の拠点・小名浜港で蓄積したノウハウを生かした商品を開発できる実力があってこそ、そのチャンスが巡ってきたと言えるでしょう。

 各社が地域の食材で知恵を絞った新作駅弁を発表することは、出店する業者にとって、いわば「駅弁の実力テスト」とも言えるでしょう。経営規模としてはコンパクトな業者も多いなか、駅弁大会は、小さな会社でも強み・特性をもって支持を集めることができるチャンスになっているのです。

 もちろん大会で繰り広げられる競争は熾烈ですが、それが来場する人々にとって「毎年美味しい出会いがある」という楽しいにつながっています。行列に待つ人々、多量に駅弁を抱えてウキウキしながら帰っていく人々を見れば、わかることでしょう。

 なお、コロナ禍後の「全国有名駅弁とうまいもの大会」は大きくオペレーションが変わり、会場に入らず2階で商品を受け取れるお取り置き販売(ネット予約のみ)、冷凍商品のネット通販などにも対応しています。

【了】

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Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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