ハンドルレバーが3本どう使う? 東京多摩のレトロ赤バイ 実は「消防史の生き証人」だった

3本目のハンドルレバーが持つ意味とは

 東久留米消防署のCB350は、全長2.404m、全幅0.775m、全高1.075m、最低地上高は0.15m。乾燥重量は149kgとのこと。排気量325ccで最大出力36馬力を発揮する空冷4ストローク並列2気筒エンジンを搭載していました。

 消防車両として車体後部には消火器2本を搭載するほか、赤色灯やスピーカーなどを装備していますが、特筆すべきはモーターサイレンも備えている点です。このモーターサイレンは、後輪タイヤの回転力で音を出す仕組みのため、そのための伝達機構があり、それを操作するためのレバーが、クラッチレバーやブレーキレバーなどとは別に設けられていました。

 これは、たとえるならば自転車のライト点灯用ダイナモのようなものです。そのため、速度が0km/hになると音が出なくなってしまうということでした。

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東久留米市消防本部(当時)が導入した赤バイについて説明してくださった佐山守夫さん(向かって右)と川口幹夫さん(同左)。自動ドアの奥に見えるのがCB350ベースの赤バイ(2022年2月、柘植優介撮影)。

 記録によると、1975(昭和50)年時点で東京消防庁管内には日本橋、牛込、小岩、東村山の各消防署に1台ずつ計4台のCB350赤バイ(二輪消防車)があったとされています。当時は、前述のとおり東久留米市は東京消防庁に消防業務を委託していなかったため、この記録には含まれなかったようです

 これら東京消防庁の4台の赤バイは、都市交通事情の悪化に伴う事故発生危険率の増加などから、1976(昭和51)年に消防業務から外され、八王子や福生、奥多摩の各消防署へ移管、査察・調査・事務連絡用として用いられることになりました。

 その後、老朽化などから順次退役。東京消防庁が使っていたCB350赤バイは現在、四谷の消防博物館に1台が保存展示されている程度です。ただ、こちらに展示されているCB350赤バイには、東久留米消防署の個体が備えるようなモーターサイレンの動力伝達機構がありません。

 そのため、東久留米の赤バイは東京消防庁のものとはひと味違う独自性の強い車体といえるでしょう。そういう意味では貴重なCB350赤バイ、消防署の歴史の語り部として末永く大事にしてもらいたいものです。

【了】

【走らないと動かないサイレンの取付位置】東久留米のレトロ赤バイほか

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