「クロネコ貨物機」で打倒ANA? ヤマトと仕掛けるJAL貨物 2社の“秘策”は対照的?
クロネコはなぜ空へ?
JALとヤマトHDのニュース・リリースによると、このJALグループ運航のヤマト貨物便は、2024年4月より、羽田・成田空港と、新千歳、北九州、那覇の3国内空港を結びます。非常に人気の高いA320シリーズのなかでも、最新タイプの「neo」ではなく、従来エンジン搭載の「ceo」なら、旅客機から貨物専用機へ改造し納入されるまでの“予約待ち”の期間も短く、機材の観点でいえば、就航予定を大きく後ろ倒しすることなく進められそうです。
ヤマト運輸にとっては、2024年4月から自動車運転業務の年間残業時間の上限が960時間となるため、長距離輸送トラック輸送をフォローしうる手段を確保しなければなりません。近年目立つ水害や、地震などにより地上の交通機関が寸断された際、空港という、陸路と比べると天災に強い特性を活かし、その代替手段にもなり得るメリットもあります。
一方、これを運航するJALグループは、貨物事業の観点から見ると、破綻以降はANAに水をあけられている背景がありました。
「米国へ貨物機で飛んで1週間、飛び石のように各空港で積み降ろしをして帰国した」――経営破綻に陥る前、とあるJALの747操縦士から筆者が聞いた言葉です。JALは747貨物専用機を多数保有していましたが、破綻後の同社は、おもに旅客機の客室スペース下の貨物室(ベリー)を用いて、航空貨物を輸送していました。
ただ、貨物専用機を使用することで、旅客便の定期路線以外にも就航できるほか、チャーター便も運航可能で、積み降ろしをする空港も柔軟に選べます。しかし、破綻後のJALは貨物専用機の保有には消極的でした。景気によるボラティリティ(変動率)が高いというのが理由で、事業は難しいともしてきました。
そのことを鑑みると、今回の「ヤマトの貨物機運航」はJALにとって、現状の貨物事業の状況に即し、堅実なスタイルで始める事業と言えるでしょう。
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