モビルスーツ搭載の宇宙戦艦?『ガンダム』世界の軍艦を分類したら現実的だった
船体サイズの大小じゃない!「戦艦」と「重巡洋艦」の違いは?
では、戦艦と重巡洋艦の違いはなんでしょうか。
チベ級重巡は「戦艦として建造されたが、近代化改装を受けて核反応炉とメガ粒子砲を搭載し、重巡に艦種変更された」という設定があります。普通に考えるなら、実体弾の大砲をメガ粒子砲に換装したり、新型機関に換装したりすると、逆に重量は減ると考えられます。
そこから推察すると、排水量で「戦艦」と「巡洋艦」が分けられ、チベ級は排水量が減ったから重巡に変更されたのでしょうか。しかし他方で、ザンジバル級機動巡洋艦は排水量が2万4000トンあります。
つまり排水量基準だと、チベ級は改装前に2万4000トン以上あったことになります。チベ級は前述のとおり1万6000トンのため、戦艦であった改装前には2万4000トン以上あったというのは、やや不自然でしょう。
また「戦艦並みのサイズを持つ」ドズル・ザビ座上のムサイ改級「ワルキューレ」は軽巡です。つまり、区分は排水量ではないと考えられます。
そう考えると、戦艦かどうかの基準は恐らく「主砲の攻撃力が一定の基準を満たしているか」ではないでしょうか。前述した地球連邦のトラファルガ級全通甲板型支援巡洋艦も「マゼラン級戦艦の武装を撤去して艦載機運用能力を強化した」という設定の艦艇ですから、攻撃力自体は低下しているといえます。そのため、ここは同一基準なのでしょう。
つまり「チベ級は、新型のグワジン級戦艦並みの攻撃力を持たせるべく、主砲を大型メガ粒子砲に換装したが、それでも基準には届かなかったため、重巡に格下げされた」ということではないでしょうか。
ざっくりと、筆者が持ちうる知識をフル動員して推察してみました。優れた世界観を持つ作品は、現実の歴史と同様、様々な考察を行うことができるのが、また別の楽しみだといえるのでしょう。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
まあ、最初はわりと適当にかっこいいから、でつけてると思う
フィクションだから
シリーズとメディア展開で醸成された重厚な世界観