生まれた時代が悪かった!? ソ連の試作VTOL戦闘機Yak-141が初飛行-1987.3.9

性能は問題なし、でもソ連崩壊ですべて無に

 こうしてYak-38の後継となる新たなVTOL戦闘機の開発が1971(昭和46)年からスタートします。旧ソ連初のVTOL戦闘機であるYak-38の初飛行が同年12月2日のため、かなり早い段階から新型機の開発が動き出したことがわかります。

 新型機もYak-38と同じく、推進用のメインエンジンのほかに垂直離着陸用のエンジンを2基搭載する構造でしたが、推力はより大きいものであり、なおかつメインエンジンはアフターバーナー付き。これにより機体が大きくなり最大離陸重量が増えても問題なく超音速飛行をこなすことが可能になっていました。

 また機首にはレーダーを搭載し、飛行制御はフライバイワイヤーで行うなど、最新戦闘機としてそん色ない性能を有するまでになっており、Yak-38と比較して圧倒的に高いカタログスペックを実現します。

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ロシア空軍中央博物館(モニノ空軍博物館)に展示されているYak-141戦闘機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 こうして生まれた新型のVTOL戦闘機は、初飛行に続いて1989(平成元)年12月29日にはホバリング飛行にも成功します。なお、同機は当初、Yak-41と呼ばれていたものの、西側諸国に存在が知られた際に、機体に描かれていた番号から「Yak-141」という誤った型式が広まってしまい、結果、のちにそれに合わせる形で改称され、いまに至っています。

 ただ、順調に開発が進んでいたYak-141に青天の霹靂が。なんと母国ソ連が1991(平成3)年12月26日に崩壊したのです。加えて、事実上の後継国となったロシアも経済的に混乱し、財政難に陥ります。その余波で、母艦となる予定だったキエフ級航空巡洋艦がすべて退役。もはや開発を続ける必要性がないほどまでに至りました。

 その結果、Yak-141は試作機が4機造られただけで終わり、世界初の超音速飛行可能なVTOL機としての実力は未知数のまま姿を消したのです。現在は2機がロシア国内で展示・保管されています。

【了】

【飛行シーンも】旧ソ連初のVTOL戦闘機「Yak-38」の貴重な姿

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