実は世界一の雷撃力? 重巡「伊吹」の超スペック 空母化も遅れ大戦に全く寄与せず

「伊吹」は、重巡洋艦として計画・起工したものの、途中で空母に改装された挙句、終戦までに就役しなかった未成艦です。ただ、細かく見ると同艦は重巡としても空母としても、見るべき特徴を持った軍艦でした。

新型機を運用できる空母を目指す

 改鈴谷型1番艦、のちの「伊吹」は建造を急ぐために、既存の鈴谷型重巡(最上型重巡の後期型)の準同型として計画されました。ゆえに改鈴谷型と呼ばれるのです。鈴谷型との主な変更点は、防空指揮所を設置し、2番主砲塔を仰角上げずに係留可能なように改善。加えて後檣(こうしょう)、すなわち後部マストを後部4番砲塔の直前に移し、無線空中線の配置を改善したり、利根型と同型の機関に変更したりといったことも行われたほか、魚雷発射管を61cm3連装4基から、4連装4基に強化するなどしていました。

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改鈴谷型重巡洋艦の原型となった最上型重巡洋艦の3番艦「鈴谷」(画像:アメリカ海軍)。

 ただ同艦は、起工後すぐに起きたミッドウェー海戦で旧日本海軍の空母機動部隊が敗戦を喫したことの影響を大きく受けることになります。旧日本海軍が空母の急速建造を計画したため、1942(昭和17年)6月に進水後の工事は一時中止とすることが決まりますが、同年末に雷装強化の設計変更がなされたことで(雷装強化は中止されたという説もあり)、重巡としての工事が継続されています。

 この設計変更では、重巡として偵察機などを搭載するための航空艤装が全廃され、代わりに駆逐艦「島風」と同じ5連装魚雷発射管を5基搭載に変更するというものでした。鈴谷型に追加された1基は、中心線上に配置された移動式で、両舷に配置された2基10門と合わせて、片舷15門の魚雷発射を可能としました。

 重雷装の特殊な軽巡洋艦として知られる「北上」「大井」でも片舷20門ですから、「伊吹」は「北上」に迫るほどの雷撃力が付与される計画だったことがわかります。なお、重巡に限ると世界一といえる雷撃力でした。

 1943(昭和18)年5月、改鈴谷型1番艦は進水し「伊吹」と命名されます。なお、このときすでに主砲塔も搭載されており、巡洋艦としてかなり完成していたといわれています。

 一方、このころアメリカ海軍は、クリーブランド級大型軽巡洋艦の船体を流用した、インディペンデンス級軽空母を続々と建造していました。旧日本海軍も対抗上、建造当初から「伊吹」の空母化を検討していたものの、「船体が短すぎて烈風や流星といった新型艦載機に対応不能」と判断、一時は高速給油艦などへの改装まで検討されています。

 こうしたなか「艦の全長より長い飛行甲板」を備えたり、艦載機側にロケット補助推進離陸、いわゆるRATOを装備すれば、新型艦載機の運用は可能という見通しが立ち、1943(昭和18)年10月に、全長205m、全幅23mの飛行甲板を備えた軽空母への改装が決定されたのです。

【解体中の姿も】原型となった重巡「鈴谷」「熊野」&空母「伊吹」の俯瞰写真

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