U-2「ドラゴンレディ」のいま 冷戦の空を飛んだ高高度偵察機が担う新たな役割とは?

ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、アメリカ空軍のU-2「ドラゴンレディ」高高度偵察機がイギリスに展開しました。U-2といえば冷戦とともに語られることの多い飛行機ですが、21世紀もなお、新たな役割を担い飛び続けています。

現代のU-2が担う役割とその先の姿とは

 冷戦終結以降も、U-2はさまざまな役割を担い続けてきました。たとえば冒頭で触れたようなロシア軍に対する偵察活動などの伝統的な役割に加え、洪水や山火事といった災害時における被災地の状況把握などの非軍事的な活動も行っています。

 なかでも、1990年代以降の対テロ戦争においては非常にユニークな任務を担っていました。それはアフガニスタンにおける対テロ作戦においてのことで、敵が道路などに設置したIED(即席爆弾)の痕跡を地上部隊に伝達し、作戦を安全に進行できるようにしたほか、U-2が搭載するセンサーによって敵が使用する携帯電話の電波を捉えて位置を特定し、そこを味方航空機などが攻撃する、という戦術がとられたのです。

 そして現在、U-2に新たな役割を与えるための試験が続けられています。それが、ステルス戦闘機同士の通信を中継するというものです。

Large 20220318 01
アメリカ空軍やロッキード・マーチンなどが進める新しいデータ共有システムの確立を目指す「ハイドラ計画」の概念図(画像:ロッキード・マーチン)。

 現在アメリカ軍で運用されているステルス戦闘機のF-22とF-35は、それぞれ異なる秘匿データリンクシステム(敵に探知されにくい情報共有システム)を搭載しています。そのため、従来はF-22が捉えた情報をF-35と直接、共有することができなかったのです。この問題を解消する、U-2を介し両者間の通信を可能とする試みが進められています。

 試験に参加するU-2には「アインシュタインの箱(Einstein Box)」と呼ばれるコンピューターが搭載され、これがいわば翻訳機の役割を果たすかたちで両者の通信を中継するわけです。これにより、ステルス戦闘機同士で密かに情報をやり取りでき、さらにそれを地上部隊や海上の艦艇にも共有することで、陸海空一体となった戦闘を行うことができるようになるのです。

 冷戦期に誕生したU-2は、従来の伝統的な偵察活動にとどまらず、初飛行から70年近く経過してもなお新たな役割が与えられ続けているのです。

【了】

難アリすぎでしょ…着陸するNASAの機体と支援するマッスルカー

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス