ロシアの侵攻は宇宙開発をも乱す 英国のロケット打上拒否で信用失墜 影響は多大か?

世界の宇宙開発への影響は限定的

 一方で、ロシアの商業ロケット打ち上げは世界的に見て大きなシェアがあるとは言えません。技術系コンサルタントのブライステック(BryceTech)社の資料によれば、コロナ前の2019年を見た場合、世界全体の軌道物体打ち上げ回数は102回で、うち商業打ち上げは16回とのこと。その内訳は中国34回(うち商業向け0)、アメリカ27回(同10)、ロシア22回(同1)、ヨーロッパ9回(同5)、インド6回(同0)、ほか4(同0)です。

 ロシアは打ち上げ回数では21.6%を占めますが、商業に限れば6.3%と、非商業打ち上げに重点があると言えるため、商業ロケットの打ち上げ市場に与える影響も限定的だといえるでしょう。なお、非商業打ち上げは主に内需と国際協力なので、これがある以上ロシアのロケット打ち上げそのものが無くなることは考えにくいです。

 ただし、人工衛星は搭載予定のロケットに合わせて作りますから、今まさに進んでいるプロジェクトに影響が出ることは間違いありません。事実上の打ち上げ拒否となったワンウェブ社は、今後もソユーズロケットを使った打ち上げを予定していたため、自社の衛星網構築のスケジュールに遅れが出るのは避けられないでしょう。

 なお、国際宇宙ステーションも、ロシアがいなければ維持できない、あるいはすぐに落下するという状況ではありません。

 今後、世界の宇宙開発事業者がどのような動きを取るのかが注目されます。

【了】

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Writer: 金木利憲(東京とびもの学会)

あるときは宇宙開発フリーライター、あるときは古典文学を教える大学教員。ロケット打ち上げに魅せられ、国内・海外での打ち上げ見学経験は30回に及ぶ。「液酸/液水」名義で打ち上げ見学記などの自費出版も。最近は日本の宇宙開発史の掘り起こしをしつつ、中国とインドの宇宙開発に注目している。

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