「国際宇宙ステーションが落ちるぞ」は本当か ロシア宇宙企業トップの脅しを検証する
ロシアの影響は限定的、でも規模縮小の可能性も
3月19日に、ロシアが管理するカザフスタンのバイコーヌール宇宙センターから、ISSの交代クルーを乗せたソユーズ宇宙船が打ち上げられ、無事にISSに到着しました。どうやらロシアは当面ISSから離脱する予定はないと見られますが、将来はどうなるか見通せません。
仮にロシアがISSを離脱するならば、クルーの交代と物資輸送に影響が出るでしょう。現役の有人宇宙船はロシアの「ソユーズ」、アメリカの「クルー・ドラゴン」、中国の「神舟」しかなく、ISSに人を往復させることができるのは「ソユーズ」と「クルー・ドラゴン」のみです。ちなみに、物資輸送船はロシアの「プログレス」、アメリカの「シグナス」と「ドラゴン」(カーゴドラゴン)です。
仮にアメリカのみになったとしても人と物資の輸送は行えますが、頻度は下がると考えられます。宇宙船もロケットも輸送する物資も、製造するには費用と時間がかかる上に、現在は世界的に半導体と各種材料の供給が不足しており、急に調達するのが難しいためです。
つまり、ISSの維持という点では影響は少ないが、今よりも滞在人数や物資輸送の規模は小さくなるのではないでしょうか。
ロシアがISSを離脱するとなれば、有人分野での存在感が小さくなるのは免れないでしょう。「ソユーズ」はISSへの定期便として運行され続けていますが、離脱をすれば行き先を失ってしまうからです。商業打ち上げとして地球周回観光をする道も考えられますが、現状を考えればお金を払ってまで乗りたい顧客が現れるかは疑問です。また、ISSの運用終了時期の再検討や、ロシア側モジュールの管理といった問題も起こってくるでしょう。
離脱しないのであれば、規模は縮小されるとしても当面はISSの現体制が保たれるものと思われます。
【了】
Writer: 金木利憲(東京とびもの学会)
あるときは宇宙開発フリーライター、あるときは古典文学を教える大学教員。ロケット打ち上げに魅せられ、国内・海外での打ち上げ見学経験は30回に及ぶ。「液酸/液水」名義で打ち上げ見学記などの自費出版も。最近は日本の宇宙開発史の掘り起こしをしつつ、中国とインドの宇宙開発に注目している。
無かったら困りますかね