アポロ計画再び 人類を月へ送る「アルテミス計画」使用ロケットが最終試験へ
超巨大ロケットSLSの概要と役割
では、「オリオン」宇宙船を打ち上げるためのロケット、SLSについて見てみましょう。これは、アメリカが開発中の超大型使い捨てロケットで、現在テスト中の「ブロック1(Block 1)」と呼ばれるタイプでは全長98.3m、最大直径8.4m、打ち上げ時の重量2608tと、アポロを打ち上げた「サターンV」ロケットに次ぐ大きさを誇ります。
特筆すべきは、機体に「スペースシャトル」の遺産が用いられている点です。オレンジ色をした1段目は「スペースシャトル」打ち上げ時の外部燃料タンクを元に開発されており、そこに取り付けられる4基の液体ロケットエンジンは、メインエンジンであったRS-25Dです。両側に取り付けられる白く細いSRB(Solod Rocket Booster:固体ロケットブースター)も、「スペースシャトル」用の4セグメントタイプを5セグメントに延長して使用しています。
エンジンもSRBも、「スペースシャトル」時代には再使用することを前提に開発されたものです。これらを今度は使い捨てるので、ある意味でとても豪華なロケットだと言えるのかもしれません。
2段目は暫定極低温推進段(ICPS)と呼ばれ、「デルタIV」ロケットの第2段に用いられるDCSSの発展型です。
なおSLSは、将来的に能力を向上させていく構想があり、現時点で「ブロック1B」「ブロック2」と発展タイプが開発されることが考えられています。現在のところ、「アルテミスIII」の月着陸まではブロック1が、4号機から8号機までが1B、以降が2という計画になっています。
SLSはアルテミス計画においてオリオン宇宙船を搭載してゲートウェイへの乗組員輸送を担う予定となっており、2022年4月以降の初飛行を目指して準備が進んでいます。
ちなみにNASAでは、SLSの発展型を火星有人探査に使おうという計画もあるものの、これはしばらく先の話となるようです。
【了】
Writer: 金木利憲(東京とびもの学会)
あるときは宇宙開発フリーライター、あるときは古典文学を教える大学教員。ロケット打ち上げに魅せられ、国内・海外での打ち上げ見学経験は30回に及ぶ。「液酸/液水」名義で打ち上げ見学記などの自費出版も。最近は日本の宇宙開発史の掘り起こしをしつつ、中国とインドの宇宙開発に注目している。
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