消えゆく「踏切ズラ~」 変わる都電荒川線 「専用軌道」と踏切なくすワケ
木密解消へ 新たに併用軌道区間も整備
同区間で、遮断機の手前から線路が延びている方向へと視線を向けてみます。電車が近接すると警報機が次々と鳴り出し、続いて遮断機が動作する様子が見られました。まるでドミノ倒しのように遮断機が下りていく(もしくは上がっていく)様子は、踏切密集地帯だからこその光景でした。ではなぜ、沿線で側道が整備されているのでしょうか。
1995(平成7)年に阪神淡路大震災が発生すると、昔ながらの木造住宅密集地域(木密)が防災上の課題として浮上します。戦後、都市開発が急速に進められた東京には、JR山手線周辺でも木密が多く残っていました。東京都はこれらの解消に動いたのです。
1997(平成9)年、東京都は木密の解消プログラムを策定。その一環として、豊島区では2015(平成27)年に区庁舎を南池袋へと移転し、あわせて庁舎跡地の東池袋一帯の街区整備にも着手しました。これら一連の再開発・街区整備の中には、豊島区が次世代の公共交通として位置付けていたLRTの新設計画もありました。
2022年3月現在は向原~東池袋四丁目間で、都電の側道として整備される補助81号線が造成中です。全長は約3.5kmに及び、南池袋地区など一部区間は供用を開始しています。側道はもともと、木密だった部分です。
LRT計画は実現していませんが、荒川線の線路なども改良が進んでいます。計画では道路と一体となった併用軌道化される箇所もあり、かつてのような踏切だらけの光景は過去のものになるでしょう。
【了】
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
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