米軍も認めた「上陸作戦のプロ」旧日本陸軍 なぜ太平洋戦争で崩壊? 空を押さえられた兵站の末路

日本陸軍の上陸作戦能力や海上輸送作戦能力は、1930年代末には、すでに完成の域に達していました。これらの軍事行動を支えていたのが「揚陸作業」です。地味ながら非常に重要、しかし危険な作業の実際とは。

使える荷役時間は「1日4時間」

 その後、「国軍決戦」とよばれたフィリピンのレイテ島を巡る戦いでは、旧日本陸軍は同じように敵の航空優勢下を強行輸送し、数多くの輸送船を失いました。

 1944(昭和19)年10月末から始まった「多号輸送作戦」では多号第二次輸送が、味方の航空優勢下で実施されて成功したことから、次々と行われ、のべ11万4008総トン24隻が使用されましたが、喪失割合は65%、海軍の輸送艦艇も入れると75%が帰って来ませんでした。そして、ここでも多くの兵士が戦うまえに飢えて死んでいったのです。大岡昇平の小説で二度にわたり映画化された『野火』の戦場が、ここレイテ島でした。

 ガダルカナル、ニューギニア方面の船舶参謀であった三岡健二郎は、戦後、次のように述べています。敵の航空優勢下で海上輸送をする場合、月のない夜を選ぶため「一ヶ月は15日」。敵の行動半径外から日没後に泊地に進入し、日の出前に離脱するため「一日は四時間」。そしてこの短い時間で揚陸するため排水量1万トンの船を使っても240tの物資しか陸に揚げることができないため、「一万トンは二四〇トン」と――。

 優れた揚陸能力を持っていた旧日本陸軍でしたが、安全な揚陸作業の前提となる航空優勢を失ったときから、兵士を飢えさせ、満足に戦えない状況に陥ったといえるでしょう。敵であるアメリカ軍から高い評価を受けていたにもかかわらず、旧日本陸軍は海上輸送だけでなく、それを締めくくる(そしてもっとも危険な)揚陸作業にも最終的には失敗したのです。

【了】

【写真】空の守りのないなか、敵の攻撃にさらされる上陸部隊

Writer:

1966年東京生まれ、戦車専門誌『月刊PANZER』編集部員を経てフリーに。主な著書に『戦闘戦史』(作品社)、『武器と甲冑』(渡辺信吾と共著。ワンパブリッシング)など。他多数のムック等の企画プランニングも。

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コメント

3件のコメント

  1. 乗りもの?ミサイルの時代に島国に陸上兵力なんてクーデター対策か?

    • 今どきそんなこと言う人がいると思わんかった

  2. 輸送船団を護衛する、護衛空母部隊。その戦略的意味すら理解できないまま、太平洋に無数の貨物船を海没させてしまった、陸海軍の上層部。そんな部隊さえも準備できる国力も無いままに、あの対米戦に突入した、無能な海軍軍令部に、陸軍参謀本部。これは、この当時だけの欠陥でしょうか?今、ロシア・中国の脅威が差し迫っている現代こそ、この太平洋戦争時の戦訓を謙虚に見直すべき時ではないでしょうか?

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