水素or天ぷら油!? 「旅客機のCO2排出ゼロ」実現のカギは? エアバス・ボーイングの方針に違い
SAFでリードする米の巨人「ボーイング」
このSAFの普及にいち早く取り組んできたのが、ボーイングです。同社は2008年という早い段階で、民間航空機のSAFによる飛行試験を成功させました。2012年からSAFで飛行機のデリバリーフライト(顧客への納入のためのフライト)を可能にし、2018年には、貨物専用航空会社のフェデックスの777F貨物機で、世界初の100%SAFを用いたフライトを成功させています。
SAFについて航空機メーカーとしても一歩リードしてきたボーイングですが、「水素航空機」については、推進派のエアバスとは異なった見方をしています。
ボーイングは2021年7月に公表したレポートで、水素燃料は大きな潜在力を秘めているとしつつも、「安全性への許認可や地上の設備も整備が必要で、長距離路線の代替燃料としてサポートされていない」とし、直近はSAFが有用という姿勢をとっています。
ただし、エアバスもそれは了解済みとばかりに、2022年2月に大韓航空と仁川(インチョン)国際空港、仏産業ガスメーカーのエア・リキードと、韓国国内の空港で水素燃料の活用を探るMOU(了解覚書)を締結するなど、インフラ整備面も抜かりなく進める構えです。ちなみにエアバスも2022年3月には、100%SAFでのフライトを超巨大機A380で成功させるなど、SAF関係の取り組みを近年急速に拡大しつつあります。
現実思考型のボーイングか、先行投資型のエアバスか――それぞれの先行きはどうなるのでしょうか。まだまだ今後もチェックは欠かせないといえそうです。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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