ロシア海軍120年ぶりの旗艦喪失 巡洋艦「モスクワ」沈没はダメダメな“ダメコン”のせい?

一発の命中が大爆発に? 沈没へ至った経緯とは

 では、ウクライナが主張するように「ネプチューン」対艦ミサイルが命中したのであれば、どのような形で、巡洋艦「モスクワ」に当たったのでしょうか。

 既述したように、もし「モスクワ」の正確な位置が判明していたとするなら、「ネプチューン」に搭載されているだろう照準レーダーによる最終誘導段階での目標の標定は不要となり、そのための発見されやすい上空へのポップアップ(上昇)も必要なくなるため、海面スレスレを飛翔するシースキミング・モードで最後まで飛んで命中したとも考えられます。

 そして、「モスクワ」の船体側面にずらりと並んで搭載されたP-1000「ヴルカーン」対艦ミサイルの連装発射筒を直撃し、それを誘爆させたと推理できるのではないでしょうか。

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ウクライナ軍の地対艦ミサイル「ネプチューン」。写真は開戦前に行われた演習時のもの(画像:ウクライナ軍参謀本部)。

「モスクワ」の「ヴルカーン」は連装発射筒に収められているので、もし1基の発射筒が誘爆を起こすと、2発の「ヴルカーン」の燃料と弾頭が爆発する可能性が高いです。そして、この二次爆発または火災の延焼によって、前後にタンデム装備されているさらに別の連装発射筒の「ヴルカーン」まで誘爆したと考えると、2発の誘爆のみならず、よりいっそう大きな被害を生じさせたことでしょう。

 この推理の傍証として、ウクライナ側が発表した「モスクワ」艦長アントン・クプリン大佐の戦死をあげることができます。「ヴルカーン」は艦橋サイド、左右に並んで搭載されており、もし誘爆を起こせば、艦橋が大損害を蒙る可能性がきわめて高いからです。

 仮定の話ではありますが、ウクライナ側が放った「ネプチューン」ミサイルが舷側に命中し、一次爆発によって艦が損傷を被ったら、艦長が艦橋にとどまって指揮を続けるのは当然でしょう。そこに被弾で生じた火災などで「ヴルカーン」の誘爆が生じたと考えられます。

 あるいは、艦橋に「ネプチューン」が直撃したか、「ネプチューン」の命中直後すぐに「ヴルカーン」が誘爆したのかも知れません。いずれにしろ、クプリン艦長の戦死は艦橋が破壊されたことを示唆しているのでは、と思えます。

 このような被害に加えて、もうひとつ考えられる推論があります。それは、ロシア(旧ソ連)製軍艦のダメージ・コントロール能力についてです。

 軍艦を設計する際には、戦争などで敵にやられた際の損害を局限できるような構造に加えて、もしやられてしまった場合、どのような対策によって被害を最小に止めるかということも講じられており、これをダメージ・コントロール、略して「ダメコン」と称します。

 このダメージ・コントロールは、設計上組み込まれている構造や機能に、ダメージ・コントロール要員(応急員)の能力や練度などが組み合わされるため、対応いかんで、同じレベルの被害であっても、沈没するかそれとも損傷を被っても自力航行できるのか、大きく差が出るほど重要なポイントです。

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コメント

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5件のコメント

  1. 甲板がいくら爆発しても沈まないだろうし、リーク映像から喫水に当たったことは分かってる。
    そこから誘爆した可能性もあるけど、わざわざ二発撃ってるから、一発は甲板狙ってダメコンを妨げたんじゃないかと思われる。
    甲板に乗せるメリットは、誘爆→沈没になりにくいことだが、それをよく分かった上で、ウクライナ軍は「いつでも沈められるぞ」という心理的な効果を狙ったんだと思われる。

  2. エスコンの知識しかないんで4発くらいなら耐えられそうだと思ってた

  3. プーチンざまあ

    モスクワ沈没おめでとうございます

  4. fcxぢゅhvgcx

    • 乙ですざまあプーチン やはりウクライナつおい