確かに「チェブラーシカ」だ! ウクライナの珍機アントノフAn-72 「翼の上にエンジン」の強み

翼の上のエンジン 何がメリットか

 An-72で採用された、エンジンを主翼の付け根上部に配置するレイアウトでは、ジェットエンジンから噴射された空気が、半ば強制的に主翼面上、主翼のフラップ(高揚力装置)に流れます。このことで機体を持ち上げる力が増す「コアンダ効果」が生じ、通常のエンジンの配置を採用する機体より、低速での離着陸が可能になるとのことです。ただ一方で、効率の良い高速巡航は不得手で、設計上も排熱に耐える特別な仕様を必要とします。

 実はこのAn-72、輸送機の歴史においても意義があるモデルです。というのも、1970年代、輸送機におけるSTOL機の開発が米ソで盛んになりましたが、An-72は、それらのなかで唯一実用化されたSTOL機ということができるためです。

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岐阜かかみがはら航空宇宙博物館で展示される「飛鳥」(2009年3月、柘植優介撮影)。

 輸送機の歴史では、条件の悪い飛行場で運用できるモデルの開発が、一種の流行になった時期がありました。たとえばアメリカ空軍では、ボーイング社にC-14、ダグラス社にC-15という研究機の開発を発注し、どちらも1970年代に初飛行しました。ただ、こちらは開発費だけでなく様々な分野で経費がかさむことから実用化にはいたりませんでした。

 日本でも、1970年に初飛行したC-1の離着陸性能を改善するため、航空研究所(NAL)がSTOL実験機「飛鳥」を川崎重工に発注し、1機だけで実験飛行を実施。ただ、こちらも実用化には至っていません。

 そのようななか実用化されたのが、このAn-72。同型機が数少ないSTOL機となったのは、旧ソ連の運用する飛行場の設備が、他地域よりも短距離離着陸の必要性が高く要求される場所が多かったことが一つの要因であったともいえます。

 ちなみに、An-72はエンジンの配置などが「飛鳥」にそっくりではあるものの、開発はAn-72のほうが、10年ほど早く取り掛かっています。

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コメント

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1件のコメント

  1. ウクライナは技術立国でもあるんだよなぁ
    豊かな穀倉地帯、戦車を作る事ができる幅広い分野での高い技術力(戦車を独自に開発して作るためには、冶金や材料工学、電子工学等などの各種の技術が必要になり、その全ての総和が戦車の性能となる)、ウクライナは旧ソ連時代には航空機、戦車、各種戦闘車両、戦闘艦船等を設計、製造してたんだよな
    なんで、あんなに落ちぶれたのか不思議で仕方ない。