“黒海でロシア艦隊撃滅”の先にあるもの ウクライナが決して譲れないワケ 長期化必至か

ロシアにとってセバストポリとクリミア半島が必須なワケ

 黒海の中央に突き出すクリミア半島は制海権を押さえるには最適です。旧ソ連崩壊後、ロシア系住民が多数派を占めるクリミア半島は自治共和国としてウクライナに編入されました。ロシアはセバストポリを2025年まで租借地として共同使用する協定をウクライナと結んでいました。ところが、2014(平成26)年にウクライナの政権が親欧米寄りになると、ロシアはクリミア半島を併合します。

 ロシアは今般の侵攻前、セバストポリと黒海北東岸のノヴォシロースクに海軍の拠点を置いていました。一方、ウクライナは東からベルジャーンシク、セバストポリ、ムィコラーイウ(ニコラーエフ)とオデーサ(オデッサ)に軍港を持っていました。ウクライナの4つの軍港にはそれぞれ造船所があり、中でも重要なのは旧ソ連時代から黒海艦隊の艦艇を建造してきたムィコラーイウです。

 ロシア軍は2月24日の進攻直後にベルジャーンシクとオデーサ南方のルーマニア国境に近いスネーク(ズミヌイ)島、そしてクリミア半島の西の付け根にあるヘルソンを占領しています。これは黒海北部の制海権を押さえムィコラーイウとオデーサを封鎖する形になりました。そして、3月にはオデーサをミサイル攻撃し、ヘルソンに近いムィコラーイウの攻略を試みるも、ウクライナ軍に撃退されています。

 キーウ攻略の失敗後、ロシア軍は東部のドンバス地方からクリミア半島につながる回廊を保持する戦闘に移りました。

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コメント

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1件のコメント

  1. 第一次、第二次世界大戦中のドイツもそうだけど、こうした海軍が陸地によって戦力を分断されて集中運用できないのは、四方を海に囲まれた日本やイギリスにはなかなか理解しにくい戦略上の悩みの種だね。