「水素をガソリン並みの価格に」実現なるか 完成近い大型液化水素運搬船 流通の要に?

「水素の大量輸送」その実現が近づいています。川崎重工が大型の液化水素運搬船を開発し、生産地からの水素の輸送を通じて、エネルギーコストを下げようとしています。“ガソリン並み”も視野に入っているようです。

先行して建造した「すいそ ふろんてぃあ」

 川崎重工は2021年に世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」(タンク容量1250立方メートル)を建造した実績があります。同船は豪ビクトリア州ラトローブバレー産の褐炭から製造した水素を液化し、日本まで持ち帰る往復約2万kmの実証試験に投入され、2022年2月、無事に神戸の液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch 神戸」へ帰港しました。

 この「すいそ ふろんてぃあ」の建造で得られた技術や安全思想、そして液化ガス運搬船の長年の建造により得られた知見を生かして開発したのが、16万立方メートル型の大型液化水素運搬船となります。

いざ液化水素の輸送網実現へ

 大型液化水素運搬船は就航後、川崎重工100%子会社の日本水素エネルギーを幹事社としてENEOSや岩谷産業と共に取り組む「液化水素サプライチェーン商用化実証」に投入される予定です。

 実証事業では商用化水準となる水素供給量年20万トン以上の実現を見通すために必要な大型設備として、1隻で約1万トンを運べる液化水素運搬船や、陸上に設置する5万立方メートル型液化水素タンクなどを川崎重工が供給。水素の製造、液化、出荷、海上輸送、受け入れまでの一貫した国際間の液化水素サプライチェーン実証を行っていきます。

 液化水素運搬船の審査を行った日本海事協会の里見利幸副会長は「水素を社会に実装していくに当たり、安全かつ効率的に製造、輸送、貯蔵するサプライチェーンが不可欠。大型液化水素運搬船の設計は水素サプライチェーンの実現をより具体的に描き出すもの」と評価しました。

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2021年竣工の「すいそ ふろんてぃあ」(深水千翔撮影)。

 川崎重工は大型液化水素運搬船を建造した後、2030年度に世界初の商用船を建造して1日当たり770トンの液化水素輸送を開始。2050年には1日当たり約3万トンもの液化水素を運ぶ大量利用・大量輸送システムの実現を目指しています。

 また、国内でも液化水素サプライヤーの岩谷産業が、北海道で製造した水素を船舶で国内の需要地まで輸送する計画を明らかにしています。

 日本が掲げる2050年カーボンニュートラル、そして水素社会の到来は、大型液化水素運搬船の成否にかかっています。

【了】

【配管だらけ】迷路みたいな「水素運搬船」の甲板ほか 写真で見る

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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