欧州「戦車分布」に見る各国関係の複雑怪奇 ウクライナ侵攻からどう描き変わる?

EUに代表されるように、ヨーロッパ各国はかつての反省からか、長年にわたり連帯しようとする動きが見られますが、一方で各国の戦車保有数を見れば、そのホンネが透けて見えてきます。最新の露ウ情勢も含め、その分布図を見ていきます。

戦車の数に見るロシアの底力とウクライナの善戦

 2020年時点での、ロシアの現役戦車保有数は3170両、ウクライナは858両とされています。侵攻開始の時点で数は変わっていると思われますが、民間のWEBサイトが公開情報からはじき出している戦車の損害は、4月30日現在でロシア595両、ウクライナ144両となっています。喧伝されるように、西側から提供された対戦車兵器によってロシアが被っている損害は少なくないものの、単純計算の損耗率ではロシア595/3170=18%、ウクライナ144/858=16%となります。ウクライナ軍がいまのところ善戦しているように見える一方、ロシアには予備が1万両程度あるといわれており、戦力の差は歴然としています。

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1967年に実施されたドニエプル渡河演習の記念パレードで、彼方まで続くソ連軍機甲部隊の列線。冷戦期のソ連戦車群は西側にとって最大の脅威だった(画像:タス通信)。

 ウクライナが戦車や火砲など重装備の援助を強く要請しているのは、そのように不利な戦局であることが分かっているからです。「ジャベリン」などの携帯対戦車火器は一時しのぎになるだけで、戦闘の主導権は取れませんし「勝利」などとてもおぼつきません。

 ウクライナを支援するためなら、戦車でも火砲でも何でもよいというわけにはいきません。扱い慣れている旧ソ連/ロシア製ならともかく、西側製は取扱い訓練も必要で即戦力化はできず、戦車の数ばかり増えて人員不足ということになりかねないからです。

 それら戦車や火砲が第三国に流出することも考慮する必要があります。アメリカ国防総省の関係者は供与後の兵器の追跡は事実上、不可能であることを認めており、そしてウクライナは国際兵器取引には手慣れています。

 この軍事衝突は想定外の連続であり帰趨はまだ予想できませんが、ヨーロッパの戦車分布図に大きな波紋を広げたことは間違いありません。対戦車ミサイルを過度に信奉する風潮から戦車の要、不要論が再燃しているなか、戦車部隊を全廃してしまったり、製造ラインを閉鎖してしまったりした国は現在の状況をどう捉えているのでしょう。戦車を国産している日本にとって、他人事では済まない問題です。

【了】

【図説】ヨーロッパ主要国戦車分布図 2020年版

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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