創業58年 時が止まったようなバス会社のドライブインに起きた奇跡 “エモさ”で人気沸騰

「奇跡の発見」はスタッフの努力の賜物?

 そうしたなか、前出の通り大川オアシスはコロナ禍中で“SNS映えするドライブインとして知られるようになり、賑わいを取り戻しました。一見奇跡のようですが、その陰には、スタッフの長年の努力が見て取れます。

 来客が減少する中でも大川オアシスの窓やステンドグラスはピカピカに磨かれ、建物は古びていたものの、状態を維持していました。SNS映えするソーダのグラスには曇りひとつなく、手間のかかるカフェメニューが提供されています。いまも厨房ではお年を召されたスタッフの方々が、慣れた手つきでサンドウィッチやパフェを作り、サイフォンでコーヒーを淹れています。細部に至るまで「そのままの状態」を維持してきたからこそ、SNSでひょっこり“見つかる”という幸運を掴んだと言えるでしょう。

実は四国は「ドライブイン天国」なのだ!

 実は他にも四国では、高知県仁淀川町「ドライブイン引地橋」、徳島県三好市「レストハウスウエノ」、愛媛県西条市「周越ドライブイン」などが今も幹線道路沿いで営業を続けています。狭隘な立地のためライバル業態が出店できなかったり、名の知れた名物メニューを擁していたりと、それぞれオンリーワンとも言える理由で生き残っているのです。

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徳島県の「コインスナック御所24」。レトロな自販機がズラリ(宮武和多哉撮影)。

 また、自動販売機による「オートレストラン」も健在です。徳島県阿波市「コインスナック御所24」でボンカレー(ごはん付き)の自動販売機がまだ稼働。しかも昭和40年台後半から長くイメージキャラクターを務めた笑福亭仁鶴さんの電光パネルがそのまま残り、2021年に仁鶴さんが亡くなった後は訪問者が絶えなかったといいます。自動販売機を活用した業態は、もともとソーシャルディスタンスを保ったまま利用できるとあって、コロナ禍の中でも利用者があったそうです。

 高知市では、ラーメン、天ぷらそば、トーストサンド、寿司盛り合わせの自販機が揃う「コインスナックプラザ」が、JR高知駅から1km圏内、近辺にコンビニ・スーパー多数という立地にも関わらず営業を続けています。これら四国のドライブインやオートレストランは、逆境のなかにあって、その特色を保ち続けています。

【了】

【SNS時代に何がウケたのか?】「大川オアシス」の眺望とメニュー 写真で見る

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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