「交通税」はなぜ必要? 滋賀県が全国初の検討「置き去りにされてきた議論」

海外ではある交通税

 日本では馴染みのない交通税ですが、海外では例があります。

 たとえばフランスの路面電車「トラム」を支えているのが交通税。市町村の規模の大きさによって税率が決められ、一定の規模以上の企業から全従業員の給料の総額に基づいて徴収されています。ただ、社員に他の交通手段を利用させている場合は免除されるそうです。

 ではなぜ、日本でこの交通税がもっと多くの自治体で検討されていないのでしょうか。ひとつには、法律にも「受益者負担の原則」があり、利用して利益を得る者だけが維持費を負担すべき、という考え方が根強いこと、そして交通を担う事業者の多くが民間企業であることなどが挙げられるでしょう。また、公営の交通機関であっても、地方公営企業法により国や自治体の会計から独立した運営が義務付けられている側面もあります。こうした点から、滋賀県内でも交通税の導入には賛否両論あるようです。

 しかし、滋賀県税制審議会は、交通税に関して「広く県民一般が受益者となりうる行政分野は他にも存在するが」としつつ、これまでの在り方に次のような問題点を指摘しています。

「例えば、子ども子育てを含む社会保障の分野については消費税・地方消費税収を社会保障施策に要する経費に充てることが明確化され、また、脱炭素・CO2ネットゼロ社会づくりの分野については炭素税の導入が現に議論されていることなどと比べると、地域公共交通の分野については、これまで交通事業者の自助努力にその多くを依存し、財源論が置き去りにされてきた面がある」

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草津市内を走る帝産湖南交通のバス(乗りものニュース編集部撮影)。

 加えて審議会は、交通の「目指すべき姿」の議論と、その財源を巡る議論は同時並行で進めるべきとしています。「税負担の議論が先行して目指すべき姿の検討がしにくくなることもあってはならない」とのこと。また、交通の充実している地域とそうでない地域の格差、つまり税負担への納得感の違いについては、「県全体に利益がもたらされることを示せるようにする必要がある」としています。

 利用者だけでなく地域全体を受益者とみなす交通税、導入が決まるかどうかは別としても、ひとつの問題提起になっているのではないでしょうか。

【了】

【滋賀県試算】バスや鉄道の維持と発展に必要な費用 画像で見る

Writer: 西田伸昌

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