「サポカー限定免許」1か月 見出せぬメリット 高齢社会に対する何かが足りない!

運転者の高齢化を背景に登場した「サポカー限定免許」。必要性はあるものの、ご利益が見出せないなか、制度は定着するのでしょうか。AT限定免許は30年かけて広がりましたが、高齢運転者の問題に時間の余裕はありません。

「免許返納」では解決しない日本の現実

「サポカー限定免許」。この新しい限定免許が2022年5月12日にスタートしてから1か月が過ぎました。

 運転免許を取得すると通常は運転できる車種が増えるところ、「サポカー限定免許」はその真逆。普通免許で運転できる車両の中でも、警察庁が指定する安全運転支援装置が搭載された普通自動車「安全運転サポート車」(サポカー)しか運転できません。

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運転する高齢者のイメージ(画像:写真AC)。

 限られた車種しか運転できない免許で似たタイプに「AT限定免許」がありますが、サポカー限定が大きく違う点は、普通免許をすでに持っている人が対象です。AT限定は免許取得時に選択することで教習数を減らして、時間と取得費用を節約できます。対してサポカー限定は、70歳以上対象の高齢者講習や75歳以上対象の新認知機能検査で有利に評価されることはありません。

 いわば“現世ご利益”がない、ともいえる制度なのですが、それでもサポカー限定免許が制度に盛り込まれたのはなぜでしょうか。そこには日本の深刻な高齢者の移動問題があります。

 日本の65歳以上の人口は3589万人。高齢化率は28.4%(2020年)です。これは全国平均。過疎地域ほど深刻で、高齢化率50%に迫る市町もあります。公共交通が成立しない地域では、地方自治体が運営するコミュニティバスも維持できません。

 こうした地域では、運転できない高齢者の移動を、運転できる高齢者が移動ボランティアとして、自分たちのクルマを使って支える仕組みが見られます。

 一定の年齢を過ぎたら免許を持たせなければいい、という意見もありますが、自分自身や地域の人の移動のために、免許を手放すことができない人たちをどうすればよいか。必要に迫られた第三の選択肢というべき免許制度が、サポカー限定免許だったと言えます。

【「免許の条件等」に何て書かれる?】サポカー限定免許証の例 画像で見る

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