「豪雪の関ヶ原」も再現!? JR東海「ブレーキ総合試験装置」の本気度 制動距離の限界突破へ
目の前に現れた「雪の日の台車」
台車試験部の現場では実際に人工雪の噴射が行われ、台車はあっという間に真っ白に。安全面上の関係で車輪を回す試験のデモはありませんでしたが、「豪雪地帯」の再現ができる装置の威力を目の当たりにすることができました。
雪の噴射だけではなく、台車に吹き付ける強風を再現できる機能もあります。こちらは雨や雪が床下へどう付着するかを調べるのに適しており、着雪しにくい車両構造の検討や、雪落としを自動化する機械の開発にも役立てられるといいます。
とはいえ、研究の本質は「地震発生時のブレーキ試験」ですから、地震の揺れも再現すべきでは、と思うかもしれません。しかし、新幹線の緊急停止は最初の初期微動(P波)を感知して即発動し、縦揺れの本震(S波)がやってくるまでに止める、という考えであるため、研究の優先順位としては車輪とレールの摩擦具合を追究するほうが高いと言えるでしょう。
この試験装置が稼働するまで、JR東海は実車両の全ての車軸で計測されたビッグデータを解析し、その結果を車両へフィードバックしてきました。ブレーキの制動距離は新幹線車両の代替わりごとに短くなっていき、700系→N700系→N700Aの各新車ではそれぞれ10%短縮。その後もN700A3次車、N700Sとそれぞれ5%ずつ短縮されています。そして新導入の試験装置によって、さらなる短縮へはずみとなることが期待されているのです。
総合技術本部の技術開発部 車両制御チームのチームマネージャーである佐藤賢司さんは「これからも技術開発を進め、より安全で快適で、皆さんに愛される鉄道を作っていきたいと思います」と話しました。
【了】
制動距離が短くなるのは良いことだけど、あまりにもブレーキが強力になりすぎてシートベルトが必要になったりして。