中国軍機が豪加哨戒機に「危険な威嚇」 そうするに至る彼らなりの「理屈」はどこに?

オーストラリアおよびカナダの哨戒機が、続けざまに中国軍機から危険な威嚇を受けました。領空侵犯もしていないのに、フレアやチャフまで撒かれたといいます。中国はなぜそこまでするのか、彼らなりの「理屈」を探ります。

中国の主張は正しいの?

 それでは、こうした中国の主張は国際法上、妥当なものなのでしょうか。

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2009年、南シナ海で活動中のアメリカ海軍の情報収集艦「インペッカブル」に対して妨害活動を実施する中国の漁船(画像:アメリカ海軍)。

 そもそも、海洋に関するさまざまなルールを設けている「国連海洋法条約(UNCLOS)」では、確かにEEZに関して沿岸国に一定の権限が認められていますが、しかしそれはあくまでも海洋資源や海洋科学調査などに関する一定のものに関してであって、そこに安全保障に関する内容は含まれていません(UNCLOS 56条)。

 また、EEZに関してはその上空を通過する自由が認められており、そのためアメリカをはじめとする国々は、領海の上空に広がる「領空」と区別する形で、EEZの上空を「国際空域」と呼称しています。さらに、こうした上空通過の「自由」などに関連して、EEZでは「(EEZ上空での航空機の運航も含む)他国による国際的に適法な海洋の利用の自由」が認められています(58条1項)。この「適法な海洋の利用」の中に、平時における軍事的な情報収集が含まれるかどうかが問題となっているわけです。

 冷戦期には、アメリカとソ連を中心に西側諸国と東側諸国が互いに数え切れない回数の情報収集活動を実施してきました。しかし、いずれの陣営も他国の領海内に侵入または領空を侵犯しない限り、基本的に相手側による情報収集活動を法的に問題視することはなかったのです。つまり、平時における情報収集活動は適法な海洋の利用に含まれると「一般的に」解されているといえます。これらを合わせて鑑みると、中国の主張には多くの問題があると考えられるのです。

 EEZに関して、とくに安全保障に関する規制を設け、かつ実際に強権的な措置をとり得る国は中国や北朝鮮などごく少数にとどまりますが、その背景にはその国なりの理屈が存在します。これに対抗するためには、感情的な対応ではなく、おなじく理屈による対応が必要なのです。

【了】

【写真】こんなの近くで焚いたらダメでしょ…フレア射出試験の様子

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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