巨大アンテナ? いえ“帆”です 三菱商事の貨物船に後付け 見直される船の風力推進
巨大風力装置“全部のせ”の船もまもなく日本に
風力推進船の開発は日本でも進んでいます。海運大手の商船三井と大島造船所は「ウインドチャレンジャー帆」と呼ばれる硬翼帆式の風力推進装置を開発。東北電力の火力発電所向け石炭輸送に投入される9万9000重量トン型バルカーに設置され、10月上旬から実際の航路で運航を始める予定となっています。
さらに商船三井は、帆走中に船内で水素を作り、その水素を燃料として活用するゼロエミッション船の開発計画「ウインドハンタープロジェクト」にも取り組んでいます。ヨット「ウインズ丸」を使用して2021年11月から行った実証実験では、実際に風と水素で走ることに成功しており、最終的には大型の貨物船への実装を目指しています。
また、商船用三井グループの商船三井ドライバルクは2022年5月20日、「ウインドチャレンジャー帆」に加えて、マグヌス効果(回転しながら進む物体に一定の揚力が働く現象)によって推進力を得る風力推進補助装置「ローターセイル(円筒帆)」も搭載したバルカーの導入に向け、木質バイオマスエネルギー大手の米エンビバと合意しています。
海運の主役の座から降りた帆船ですが、2020年代後半にかけ、最新型の帆を取り付けた貨物船が徐々に増えて来ると見られます。
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Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
バブル直前の頃にあったけど結局はうまく行ってない。