日本では幻の「消防飛行艇」 北米で計画絶賛進行中… かつての「PS-1消防艇計画」と共通点アリ?
DHC-515とPS-1の共通点
のちにDHC-515となるCL-415は、その出自をカナダのカナディア、その系譜を継いだボンバルディアにもちます。そもそもCL-415は、カナディアのレシプロエンジン機、CL-215のエンジンをターボプロップに換装したモデルです。
ちなみに、この機の開発元の経緯をたどると、カナディアからボンバルディアに移り生産終了に。その権利がバイキングエアに譲渡された後、さらに商標の購入により復活したと注目されたデ・ハビランド・オブ・カナダに引き継がれた――となります。
CL-415はその後デ・ハビランド・オブ・カナダの手で再び生産を行い、DHC-515という計画を2019年に決定しました。ただ、この計画はコロナ禍で遅延し、2022年3月末に欧州の顧客と22機の購入意向書が結ばれ、政府間交渉を経て最初の機体は2020年代半ばに納入予定となりました。
DHC-515はCL-415が単に名前を変えたというわけではなく、より着陸重量を増して防錆対策を強化し、消火用水を1000リットル増やし7000リットル搭載できるよう、性能の向上が図られています。
足跡はPS-1をベースデザインとし多用途飛行艇としてモデルチェンジを図った「US-1」、その派生型である「US-2」になった日本の飛行艇と共通するかもしれません。それは、機体の外形をさほど変えることをせずに基本設計を活用して、水上機としてのプラットフォームを生かしながら、改善による性能向上や、機内容量を活用して用途の拡充を目指したという点でしょう。なお、CL-215の初飛行もPS-1と同じ1967年でした。
CLシリーズは日本で2回、デモ飛行を行っています。1回目は1974年に消防庁がCL-215を借り受けて、2回目は阪神淡路大震災の翌年(1996年)の3月、兵庫県神戸市のポートアイランド沖にて、三菱重工業主導で行われました。これは当時、三菱がCL-415の輸入と販売を行うと発表しており、その一環で消防関係者を招き実施されたものと記録されています。
先述のとおり、国内での消防飛行艇はまだまだ現実から程遠いといった状況ですが、航空機の輸出という課題も視野に含めれば可能性はどうでしょう。もし製造する新明和工業の社内で「『US-2』の系譜を組む消防飛行艇の転用は可能か」という点で、ささやかながらでも研究で続けられていれば、日本製の消防飛行艇が生まれることもありえるかもしれません。
【了】
消防飛行艇はこの先世界中で需要がありそうだし、びっくりするほどの効率を叩き出せれば高額だったりしても売れそうな気がする。