副都心線で終了だったはずでは… なぜ東京メトロは新線整備に動き出したのか
東京メトロが有楽町線と南北線について、延伸区間の建設に向け動き出しました。2020年度まで、「副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない」と公言していたのにもかかわらずです。転機はどこにあるのでしょうか。
前身である営団地下鉄の役割とは
2022年3月に国土交通省から鉄道事業許可を受けた、東京メトロ有楽町線の豊洲~住吉間と南北線の白金高輪~品川間の延伸工事。東京都が都市計画の素案を公表するなど、着工に向けた準備が本格的に動き始めました。ところでメトロは以前、「『もう新線は建設しない』と公言していたはずでは」と思う人もいるのではないでしょうか。
実際、メトロは2020年度の有価証券報告書までは、「2008年6月14日に開業した副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない方針です」と記載しているように、新線建設はしない方針を明確にしていました。
有楽町線の延伸についても「輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、当社としては、整備主体となることは極めて困難と認識しています」と明言しています。
そもそも前身の帝都高速度交通営団は、民間会社では調達が困難である莫大な建設費を実現するために、政府や自治体が出資する特殊法人として設立されました。副都心線の開業をもって地下鉄ネットワークが概成したことで営団の使命は終り、運営に特化した民営企業に改組するというのが営団民営化のロジックです。
営団民営化を決定づけた1986(昭和61)年の行政改革審議会の報告書でも「帝都高速度交通営団については、地下鉄のネットワークがほぼ概成し、路線運営が主たる業務となる時点における完全民営化を目標として、5年以内に可及的速やかに特殊会社に改編する」とされています。
特殊会社とは企業的経営が可能な公的事業を行うため特別法に基づいて設立された会社のことで、メトロやJR北海道、JR四国が該当します。一般的には特殊会社化を「民営化」、政府などが保有する株式を全て売却することを「完全民営化」と呼びます。
これを踏まえて行政改革審議会の報告を読み直すと、まずは出来る限り早く民営化(特殊会社化)を実現し、残る新線建設が終了次第、完全民営化するという意味だと分かります。つまり特殊会社は完全民営化の前段階であって、新たな路線建設に乗り出すことは想定されていないのです。
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