副都心線で終了だったはずでは… なぜ東京メトロは新線整備に動き出したのか

東京メトロが有楽町線と南北線について、延伸区間の建設に向け動き出しました。2020年度まで、「副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない」と公言していたのにもかかわらずです。転機はどこにあるのでしょうか。

政策で左右される東京メトロ

 メトロの株式は国が53.4%、東京都が46.6%保有しています。猪瀬氏は完全民営化の前にメトロと都営地下鉄を経営統合するよう求めました。その顛末はここでは細かく取り上げませんが、猪瀬氏が2013(平成25)年に失脚すると一元化論は沙汰止になりました。

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東京メトロ副都心線の10000系電車。東京メトロは同線の開業をもって完全民営化される予定だった(画像:東京メトロ)。

 猪瀬氏の主張は新線建設の終了を前提としたものでしたが、後任の舛添要一都知事が五輪後のまちづくりを視野に、新たな地下鉄を整備する構想を発表すると、またも地下鉄建設再開論が台頭しました。2015(平成27)年の「都市交通審議会答申第198号」も、有楽町線延伸と南北線延伸を「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」と位置づけ、建設の機運が高まりました。

 ではこの地下鉄を誰がつくるのか。メトロは乗り気ではなく、東京都がメトロ線を延伸する事業に金を出すのも変な話です。そこで東京都は猪瀬氏とは別の形で保有株を取引材料に使います。すなわち新線建設を受け入れれば、東京都は株式を売却するという決着でした。

 メトロの2022年度有価証券報告書は「沿線の開発状況等を勘案した輸送需要予測の動向を踏まえ、『交通政策審議会答申第371号』及び国と東京都の合意に基づく十分な公的支援及び当社株式の売却が確実に実施されることを前提に、当社ネットワークに関連する両路線の整備主体となることがさらなる企業価値向上に資するものと判断」して建設を担うとしつつ、「両路線を除き新線建設を行わ」ないという記載に改められました。

 これまで見てきたように、政府や自治体の意向により方針が変わることは珍しくはありません。ただ今回、東京都が株式売却(当面は50%)に合意したことで、今後は政府と東京都の影響が減ることはあっても増えることはないので、こうした復活劇も今回限りとなりそうです。

【了】

※誤字を修正しました(9月1日16時30分)。

【路線図を俯瞰】東京メトロ9路線+新2路線

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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