ジャンボ機の“コブ”の上にもっとデカい“コブ”! 異形すぎる747「ドリーム・リフター」なぜ誕生?

「ドリーム・リフター」が中部に来まくりなワケ

 そのため、ボーイング社はパーツの輸送で「ジャンボ・ジェット」の改造機を用いることに。背中に大きな貨物スペースを設け、787むけの大型パーツを輸送することにしたのです。また機体も、長尺パーツを搭載できるよう、胴体後部が横に折れ曲がるように開く構造が採用されています。

 日本で787のパーツを製造する工場は中部地方に集中しています。中部空港に「ドリーム・リフター」が発着するのは、そこで作られた主翼などのパーツを、同機を用いてアメリカの最終組立工場に空輸するためです。ちなみにこういった関係から、787の初号機は中部空港内の複合施設「フライト・オブ・ドリームズ」で見学可能です。

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ボーイング787初号機「ZA001」(乗りものニュース編集部撮影)。

 2006年の「ドリーム・リフター」の初飛行は、機体の改造作業を行った台湾で実施されました。初飛行のフライト時間は約2時間で、担当したテストパイロットは「LCF(ドリーム・リフター)に乗っていることを忘れしまうこともあったほど、うまくいった」といった趣旨のコメントを残しています。

 なお、旅客機の背中を大きく膨らませて、巨大貨物機とするアイデアは、「ドリーム・リフター」が初めてではありません。

 たとえば往年の貨物機であれば、ロケットなどの部品を運ぶためプロペラ旅客機「ボーイング377」をベースに改修が図られた「グッピー」シリーズがあります。また現代であれば、エアバス社が、ヨーロッパ各所で作られた大型の旅客機パーツを輸送する目的で、A300やA330を改造した貨物機「ベルーガ」シリーズを運用しています。

 ちなみにエアバス社、実は「ベルーガ」をデビューさせる前は、前述の「グッピー」を契約して借用し、パーツ輸送に充てていました。そのため一部からは、「エアバスの翼はボーイング製」と揶揄されたエピソードもあったそうです。

【了】

【写真徹底レポ】ドリームリフターの全貌に肉薄&機内にも潜入(21枚)

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Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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