ポンコツT-62 ウクライナでロシア軍どう使うつもりか 「んな無茶な!」とも言い切れない?
「自走対戦車砲」「移動陣地」として
なお、T-62も含めた「鋼鉄の箱」である戦車は、雪中で待機するとなると車内が極めて寒くなるため、乗員はエンジンをアイドリングさせて定期的に車内を暖めなければ耐えられません。しかし、エンジンを動かしていると、敵(ウクライナ)側の赤外線暗視装置で事前にその位置を探知されてしまい、各種火器で先に撃破される心配があります。
しかし、たとえば乗員がツナギの電熱服を着用。車内に予備の大容量バッテリーを搭載し、そこから電源の供給を受ければ、エンジンをアイドリング状態にせずとも、バッテリーが切れるまで乗員は最低限「凍えない程度」の熱を電熱服から供給されます。
しかも、電熱服の発熱量程度では車内までは暖かくならないので車体全体は暖まらず、赤外線暗視装置での視認も難しくなります。ただ、大容量バッテリーの蓄電が切れたらエンジンを動かして充電しなければならないため、そのさい敵に視認されるか否かは運まかせとなるでしょう。
「冬将軍の国」の軍隊である以上、ロシア軍は既存の流用可能な電熱服ぐらい保有しているでしょうし、大容量バッテリーも既存品や民需品で賄うことができると推察します。もっとも、同軍にそれだけの下準備を整える「手際」と「体力」があれば、という前提付きでのハナシですが。
このような使い方は、戦車ではなく「全周装甲を備えた自走できる対戦車砲」とでも形容するような方法ですが、ロシア軍は、守勢に回りつつある自軍の状況と、ほどなく訪れるであろう「冬将軍」を考慮し、あえて「自走対戦車砲T-62」あるいは「移動防御陣地T-62」として使うことを念頭に置いて前線投入を進めているのかもしれません。
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Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
ロシア軍を応援しているようだが、その真意は如何に?
旧ソ連でいえばカテゴリーGか3に当たる兵器で、動員までに3か月ぐらいはかかるし、運用する人員も基本的に予備役、後備役。
ソ連の作戦だと占領地域には新鋭の部隊はおかないで前進あるのみだから、任務もおのずとこういう兵器でこなせることになるのでは?