陸自現役戦車、74式だけが丸っこい理由 角から丸、さらに角へ なぜ変遷?

戦車の砲塔形状の説明で、「角張った形」や「お椀型」といわれることがあります。この形状の違いは、開発時のデザインセンスだけでない、戦車にとっては重要な性能のひとつである防御力に直結しています。

被弾しやすい砲塔ゆえ

 陸上自衛隊が2019年現在運用する戦車のなかで、最も古いのは74式戦車ですが、その砲塔とのちに登場した90式戦車や10式戦車の砲塔では明確な違いがあります。それは、74式戦車の砲塔が丸みを帯びた継ぎ目のない曲面形状なのに対して、90式戦車や10式戦車のものは角張っていて溶接跡がところどころに見られる点です。

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滑らかな曲面形状の砲塔が特徴の74式戦車(画像:陸上自衛隊)。

 これは各々の作り方の違いに起因するもので、74式戦車の砲塔は、溶かした鉄を鋳型に流し込む鋳造の一体成型構造だからであり、90式戦車や10式戦車の砲塔は防弾鋼板を溶接でつなぎ合わせて作っているからです。とはいえ、この溶接を用いた戦車の作り方は最近誕生したものなのかというとそうではなく、第2次世界大戦中の戦車にも用いられたものです。

 そもそも初期の戦車は、切り出した鋼板をボルトやリベットで止めて作っていました。しかし、これだとたとえ飛んできた砲弾を鉄板がはじいたとしても、ぶつかった衝撃でボルトやリベットの軸がちぎれ、その破片が車内を飛び回って乗員を傷つける恐れが生じました。
 
 そこで、ボルトやリベットを用いない生産方法として、鋼板同士を溶接でつなぎ合わせるようになりました。しかし溶接は、鋼板が薄い場合は問題ありませんが、厚くなればなるほど技術的に難しくなり、なおかつ鋼板がぶ厚ければそのぶん溶かす部位の鉄も増え、高電圧大電力が必要になり、生産の難易度が上がります。
 
 よって、ぶ厚い鋼板を用いた溶接構造の戦車を作れたのは、高い技術力を持つ国に限られました。一方、鋳造の場合は、戦車の砲塔のような大きさだと、それなりの規模の工作機械と工場が必要ですが、製造ラインさえ整えられれば溶接ほどの高い技術力がなくとも生産が可能です。
 
 また継ぎ目のない一体構造というのは、割れや破断を防げます。さらに戦車の防御力の概念として、「弾に貫かれない」だけでなく「弾をはじく(滑らせる)」というものも考慮されるようになりました。このことを「被弾経始(ひだんけいし)」といいます。

【写真】色々ついている74式戦車の砲塔上面

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コメント

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2件のコメント

  1. 成形技術の向上で、モジュール化しつつ曲面装甲なんて時代が来たりして。

  2. APFSDSに対しては、被弾経始など意味を持たないという一番大切なことが抜けている。