対空装備は馬車仕立て…? WW2期ドイツ軍の「対空馬車」は無いよりマシな心理兵器か

「電撃戦」で知られるWW2期ドイツ軍であっても、全ての部隊が最新装備で固められていたわけではありません。新鋭戦車などが配備された部隊の隣には、馬車で行軍する部隊もいました。後者に見られた、馬車引きの対空装備のお話。

「対空馬車」が果たした役割は対空戦闘のみにあらず

 地上部隊はいつも空を気にしています。対空馬車はドイツ軍一般部隊の苦肉の策だったかもしれませんが、敵の飛行機が馬車部隊だと思って侮ってかかると、MG34がうなりを上げました。飛行機は撃墜こそされなくとも、地上から反撃され1発でも命中弾を感じると、途端にパイロットの戦意は下がるものです。ましてや積極的に対空火器へ挑んでいこうとは思いません。

 地上部隊にとっても、馬車列に1台でも対空馬車が混じっているだけで、飛行機にやられる一方ではなく反撃できるという安心感があります。発射速度毎分800発から900発のMG34連装機銃の射撃音は、まるでチェーンソーのように派手に聞こえたはずです。それだけでも「反撃している感」はあります。対空火器の役割は敵機を撃墜できることが一番重要ですが、パイロットに圧迫感を与えて寄せ付けないことも重要であり、地上部隊の戦意を維持するという一種の心理的兵器でもあります。

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36式連装機銃架(画像:Bundesarchiv、Bild 101I-028-1632-13/Weber、Robert/CC-BY-SA 3.0、CC BY-SA 3.0 DE〈https://bit.ly/3DYz6ld〉、via Wikimedia Commons)。

 ひるがえって2022年現在のウクライナでは、有人機の活動が不活発な傍らで、各種のドローンが躍動しています。地上部隊は、たとえ相手が小さなドローンでも、対抗手段が無ければやはり逃げ回るしかないのです。

 そうしたなか、ドイツがウクライナへ自走対空砲「ゲパルト」を供与したことがニュースになりました。ドイツでは退役済みの旧式兵器で、当初はその実効性を疑う向きもありましたが、その後、ドローン相手に戦果を挙げているようです。旧式でも、地上部隊には頼もしい存在なのです。対空馬車も一見、滑稽にも見えますが、地上部隊には頼りにされていました。

【了】

【画像】高性能かつ汎用性も抜群なMG34機関銃

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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