もうひとつの空自「F-2」戦闘機案とは ルックスは大違い テーマは「日本のイケイケ技術者の本気」?
日本版「FS-X」にかけられた強い技術者の意思
のちのF-2戦闘機につながる「FS-X」も、前作機のF-1も、米ソ冷戦の下、対艦攻撃力を重視した機体となっていました。加えて「FS-X」は、F-1になかった中距離ミサイルの搭載で対空戦闘を意識したマルチロール機を目指したと言えます。
つまり、日本側が考えていた「FS-X」の設計案は、F-1で培った経験に上乗せして、日本独自の機体をつくり上げようと日本の技術陣が意気盛んだったことの証といえるでしょう。彼らは、昭和の若者言葉で、「ブイブイ言わせていた」いたのです。
「FS-X」の日本側のイメージ図は、米国と論争が激しさを増す中、「日本もここまでできる」と示すために発表されたのは間違いありません。国内開発で決着させるための強い意志がイメージ図には込められていたのです。
後年、筆者は三菱のグループ会社関係者から「あくまでも開発にお金をかければできた機体」と聞かされました。とはいえ当時、「FS-X」は国内開発か米国機をベースにするか、日米の宣伝合戦の様相も見せており、日本側もなんとか国内開発の線を推し進めようと必死だったのでしょう。
2022年現在、F-2戦闘機の後継機として「次期戦闘機」と呼ばれる機体を日本・英国で共同開発を進めています。現在の、あるいはこれから公表される「次期戦闘機」のイメージ図は、どんな意志が込められるでしょう。無人機や弾道ミサイル対応態勢が注目を浴びていますが、初の日英共同開発など見逃せない点もあります。それだけに気になります。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
当時は日米貿易摩擦もあり、かなり米国側も強行に口出ししてきた事が、新聞等で盛んに喧伝されてましたね。