もう一つあった自衛隊の“スクランブル”待機、何のため? 「領空・領土侵犯」ではない目的
「遭難事故」への対応どんなもの?自衛隊パイロットに聞く苦労
空自の航空救難団のモットーは「That others may live~他を生かすために~」ということですが、筆者は以前、救難ヘリにKV-107Aが使われていた頃、共用空港であるこの基地で、同機を担当するパイロットから「救助をするまで上空でホバリングをしていると、任務を終えて着陸しても手の指が固まり、操縦かんから離れないこともある」と聞かされたことがあります。高度を保ち気流に流されずホバリング位置を変えずに留っているのは、パイロットも降下する救難員(メディック)も高い技量とともに、強い緊張に耐えねばならないと知りました。
また、別の基地ではU-125Aのパイロットから「レーダーは発電量に限度があり、長距離モードでは捜索電波の幅が狭くなる。幅を広げれば近距離しか捜索できない」と、電子機器が発達しても遭難者の発見は苦労が伴うことを教えられました。荒れた天候で、地表や海面に出来る限り近づいて救出するのは一層過酷になると、容易に想像できます。
駐機場に置かれたU-125AとUH-60Jは、滑走路を挟んで遠くにある旅客ビルからも見ることができました。しかし、平日と違い、ずらりと並ぶ戦闘機もなく、離陸の轟音もしません。空港ビル内にいたほかの旅客が自衛隊の駐機場に目を向ける姿はありませんでしたが、筆者は、「他を生かすために」というモットーの実践を見たと認識しています。
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Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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