踏切ないのにカン カン…なぜ警報機が? 予告信号ならぬ激レア物件「予告警報機」とは
警報機の灯火は旧型で残る
そこで、付近の改良が検討されました。改良工事では高低差をなくすため峠を掘り下げるとともに、トンネルを通過していた線路を道路側へ移設。ちなみに現在、伊野線に専用軌道と併用軌道(いわゆる路面電車区間)が混在するのは、この工事によるものも大きいのです。
掘削の結果、平野部と峠との高低差は縮まりました。しかし峠側から平野部へと向かう道路は、先述の通り急カーブの坂道です。カーブの先でとさでん交通と事故を起こさないように、「予告警報機」が設置されているわけです。これは全国でも珍しい光景でしょう。
警報機を仔細に眺めると、隣にカーブミラーも設置されています。カーブミラーには踏切も映し出され、ミラーを通じてもカーブの先に線路があることを確認できます。とはいえ初めてこの様子に出くわすと、線路が見えないのにポツンと警報機が立っている状況に、少々驚くかもしれません。
筆者(小川裕夫:フリーランスライター・カメラマン)が訪問したのは2010(平成22)年のことですが、2022年現在も現場に変化はありません。ただし、線路脇の警報機の灯火があらゆる方向から視認できる全方位型に更新されている一方、「予告警報機」の灯火は従来のまま。これはおそらく、坂の方向へのみ知らせればよく、指向性の高い旧型の方が都合がよいためでしょう。
【了】
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
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