なぜ? 観艦式の船に“陸自トラック乗り”乗務の理由 進む「水夫化」背景にある危機

2022年現在、海上自衛隊で陸自隊員への船乗り育成が本格化しています。すでに海自輸送艦への乗り組みも始まっていますが、これらは近い将来新編される統合部隊を見据えてとのことだとか。どういうことなのか見てみます。

急ピッチで進む海上輸送能力の拡充

 なぜ、彼ら陸自隊員が海自隊員とともに「海上輸送部隊」の船舶要員として教育を受けているかというと、悪化する安全保障環境の変化とそれに伴う自衛隊の対応が背景にあります。

 東シナ海で中国軍の活動が活発化する中、自衛隊は南西地域の防衛体制の強化を進めています。陸自は先島諸島のうち、与那国島と宮古島に駐屯地を設置。2022年度中には石垣島にも駐屯地も開設し、地対空誘導弾部隊や地対艦誘導弾部隊を配置する予定です。加えて、離島奪還を担う水陸両用部隊である水陸機動団も増強を進めており、2023年度には第3水陸機動連隊が長崎県大村市の竹松駐屯地に新編されます。

 ただ、島嶼部への攻撃に対応するには、海上優勢と航空優勢の確保はもちろんのこと、上陸阻止や奪還に使う陸上戦力を迅速に機動・展開させる必要があります。

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横浜の山下埠頭で一般公開された輸送艦「くにさき」の艦上でラッパを吹く乗員。真ん中の隊員は陸上自衛官(深水千翔撮影)。

 自衛隊が持つ装備や人員の輸送が可能な艦艇は、前出した海自おおすみ型輸送艦3隻以外には輸送艇2号と呼ばれる小型揚陸艇が1隻あるのみ。防衛省がPFI(民間資金等活用事業)方式で契約している民間フェリー「はくおう」(1万7345総トン)と「ナッチャンWorld」(1万712総トン)もありますが、いずれも船体が大きいため小規模な港への輸送では不向きです。

 その一方で、有事の際には全国各地から島嶼部に陸自部隊や各自衛隊の装備品を継続的に輸送する必要があり、航空機による輸送に適さない重装備や一度に大量の物資などを輸送するためには、海上輸送能力を強化する必要があるといわれていました。

 こうしたなか、2018年に策定された「中期防衛力整備計画(中期防)」で明記されたのが、「海上輸送部隊」1個群の新設です。これは「平時から有事までのあらゆる段階において、統合運用の下、自衛隊の部隊などの迅速な機動・展開を行い得る」共同の部隊として設けられるとされています。

 そこで防衛省は「海上輸送部隊」に配備するため、2022年度(令和4年度)予算で中型級船舶(LSV)1隻と小型級船舶(LCU)1隻を取得することを決定し102億円を計上。さらに2023年度(令和5年度)概算要求でLCU2隻の取得を求めました。将来的な船隊規模はLSV2隻とLCU6隻の計8隻となる予定です。LSVは本土と島嶼部への輸送を行える大きさで、搭載能力は2000トン程度。LCUは喫水が浅い港湾への入港が可能な大きさで搭載能力は数百トン程度のものを想定しています。

 この新たに加わる「海上輸送部隊」の船舶に乗船するのが、おおすみ型に乗艦している陸自隊員たちなのです。

【迷彩着て操船する米陸軍兵も】陸自隊員乗り込む輸送艦「くにさき」ほか

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