なぜ? 観艦式の船に“陸自トラック乗り”乗務の理由 進む「水夫化」背景にある危機

2022年現在、海上自衛隊で陸自隊員への船乗り育成が本格化しています。すでに海自輸送艦への乗り組みも始まっていますが、これらは近い将来新編される統合部隊を見据えてとのことだとか。どういうことなのか見てみます。

アメリカや旧陸軍に前例あり

 陸上自衛隊員が船を動かすというと、あまり馴染みがありませんが、似たようなことはすでにアメリカで行われています。アメリカ陸軍は輸送船舶を自前で保有しており、兵站支援艦(LSV)「ジェネラル・フランク・S・ベッソン・ジュニア」級(満載排水量4199トン)と汎用揚陸艇(LCU)「ラニーミード」級(同1102トン)、いずれも主力戦車であるM1エイブラムスを積載する能力があります。これらは艦首にバウランプと呼ばれる起倒式の道板を備えているため、港湾施設が整備されていなくてもある程度の広さの砂浜などさえあれば物資の揚陸が可能です。

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国際観艦式に参加した海上自衛隊の輸送艦「くにさき」(深水千翔撮影)。

 ちなみに旧帝国陸軍は独自に大規模な船舶部隊を持っていました。これは中国大陸など海を隔てた遠隔地に展開する部隊の輸送は、海軍ではなく陸軍の役割とされていたためで、上陸作戦で使用する上陸用舟艇などの開発も行っています。拠点は広島市宇品に置かれ、太平洋戦争の終結時には陸軍船舶司令部を筆頭に30万人以上の大所帯となっていました。

 特殊な船舶としては、大発(大発動艇)や小発(小発動艇)といった上陸用舟艇を船尾から発進させることができる舟艇運搬船「神洲丸」、空母のような全通甲板を持ち航空機の運用が可能であった「あきつ丸」、輸送潜水艦「三式潜航輸送艇(通称まるゆ)」があります。このほか、大小問わず多数の船舶を運用していました。

 島国である日本にとって、遠隔地へ大規模な陸上部隊を展開するには、それを輸送できるだけの能力を持った船舶が必要不可欠です。有事や災害への対処といった任務を踏まえつつ、陸自のニーズに沿った輸送船舶の整備を行うことは、部隊の柔軟な運用を可能にするという点では意義があるでしょう。

 2022年11月6日に行われた海上自衛隊の国際観艦式では、輸送艦「くにさき」も受閲艦として参加し、同艦に勤務する陸自隊員が艦橋で海自隊員と並び、観閲艦の護衛艦「いずも」に向けて敬礼をしていました。

 次の観艦式は2025年の予定です。そのころには前出の「海上輸送部隊」も発足している予定のため、ひょっとしたら陸上自衛官が運用する船舶も祝賀航行部隊の一員として参加しているかもしれません。

【了】

【迷彩着て操船する米陸軍兵も】陸自隊員乗り込む輸送艦「くにさき」ほか

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1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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