不審船、逃がすな!! ブっ飛び海保巡視船「あしたか」みてきた 珍しい推進システムの裏にある“反省”

2種類の推進システムの混載なぜ?

 ブリッジ(船橋)には巡視船の航行や任務を行う上で必要な機能が詰め込まれており、操船コンソールやレーダーの表示装置、警備救難情報表示装置、通信機器などが置かれていました。

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巡視船「あしたか」の食器。海上保安庁のコンパスマークがデザインされている(深水千翔撮影)。

「あしたか」の特徴は、ユニークな推進システムでしょう。同船は船としては快速の35ノット(約64.8km/h)で航行できますが、そのために高速用の固定ピッチプロペラ2つと低速用のウォータージェット1基を備えた3基2軸という構造です。これが使われているのは、らいざん型では7番船の「みずき」までです。ちなみに2022年11月までに全船が退役した、しんざん型も同様の推進システムを備えていました。

 通常、高速性が求められる巡視船艇の場合、ウォータージェット推進だけの場合がほとんどで、プロペラとウォータージェットの混載というのは、なかなかありません。ゆえにエンジンの制御を行うリモートコントロール装置には、プロペラに繋がる主機に指示を出すテレグラフハンドルと、ウォータージェット推進装置の制御レバーが置かれており、そこを見てもプロペラとウォータージェットの両方を組み合わせて運用していることがわかります。

「あしたか」を含むらいざん型巡視船がプロペラとウォータージェットの両方を推進システムとして採用した背景には、不審船や違法操業を行う漁船などの高速化への対応と、遭難船舶を救助する際の操船性の向上といった2つの要素が上げられます。

 実際、1985(昭和60)年4月に発生した日向灘不審船事件では、漁船に偽装した不審船が最高40ノット(約74.1km/h)もの速力で、宮崎県の漁業取締船だけでなく海保巡視船の追跡までも振り切って逃走したことから、巡視船の高速化・高性能化は急務でした。その一方で遭難船舶の救助や接舷して他船に立ち入る際には、速度を落としつつ繊細な操作を行わなければならず、速力を問わず良好な操船性が求められることになります。

 ただ、しんざん型と、らいざん型が計画された当時は、ウォータージェット推進器のみでは信頼性に不安があったことから、高速航行時のメインはプロペラ、低速航行時はウォータージェットと使い分けることが想定されたのです。しかし、その後、ウォータージェットの信頼性が向上したため、混載はこの2タイプで終わり、しんざん型が全隻退役した今、残るはらいざん型の前期建造船の7隻のみになっています。

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