不審船、逃がすな!! ブっ飛び海保巡視船「あしたか」みてきた 珍しい推進システムの裏にある“反省”

「あしたか」の姉妹船が対応した歴史的事件

 らいざん型は1番船の竣工から30年近く経つ現在でも、新造船が続々と登場しており、建造時期によってさまざまな点で違いを見ることができます。

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東京湾内で行われた海上保安庁視閲式で航行するらいざん型巡視船(深水千翔撮影)。

 たとえば新日韓漁業協定の締結を受け、「捕捉機能強化型」として建造された7番船の「みずき」(PS-11)は、プロペラとウォータージェットを併用する従来の推進システムを備えながら、20mm多銃身機銃に加えて暗視装置や高圧砲水銃を新たに搭載し、防弾性能を強化しています。

 同船は九州南西海域で発生した工作船事件(2001年12月)や、尖閣諸島海域での中国漁船衝突事件(2010年9月)、そして領海に侵入した台湾船と同国の海岸巡防署所属船への対応(2012年7月)に従事。九州南西海域工作船事件では、「みずき」による射撃が北朝鮮の工作船に命中し、火災を発生させています。

 改良型となる8番船の「こうや」(PS-12)からはエンジン出力が向上したため、推進システムをウォータージェット2基に統一。プロペラと舵を廃止しました。併せて「みずき」でも搭載した暗視装置と高圧砲水銃を標準で装備しています。9番船の「つくば」(PS-13)からは船首側に強行接舷用の防舷材が取り付けられるようになり、さらに外観のイメージが変わりました。

 そして2022年12月21日にはジャパンマリンユナイテッド(JMU)横浜事業所鶴見工場で建造されている18番船の「きりしま」(PS-22)が竣工し、海上保安庁に引き渡される予定です。

 時代に合わせて改良が行われていく、らいざん型ファミリー。その1隻1隻に注目してみるのも面白いでしょう。

【了】

【船橋や調理室も】韋駄天巡視船「あしたか」船内や機銃をイッキ見

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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