兵器が「ハマる」とは? ウクライナで重宝される独製旧式兵器と北朝鮮無人機侵入事件

「ところ変われば」という言葉を体現しているのが、ドイツ製対空自走砲「ゲパルト」でしょう。本国で陳腐化していた兵器が、ウクライナでは大いに重宝されています。それはおよそ「兵器」というものの本質に関わることでもあります。

なぜ韓国は北朝鮮の無人機を迎撃できなかったのか

 北朝鮮と対峙する韓国軍は、長い時間と高いコストをかけて防空システムを構築してきたはずです。しかし12月の事件では有効な働きができなかったのです。どうしてでしょうか。ウクライナの「ゲパルト」とは逆に、「必要な時に、必要な物が、必要な数だけ」という原則にハマらなかったのが原因のひとつと筆者(月刊パンツァー編集部)は考えます。

 韓国軍は無人機を迎撃するのに戦闘機と攻撃ヘリコプターを緊急発進させ、100発以上射撃したようです。その効果が無かったのは、墜落した機体や砲弾の破片や流れ弾で地上に被害が出ることを恐れ、射撃範囲を限定したからといわれます。

 空中戦闘では、地上への影響は避けられません。防空シェルターは敵機の攻撃を避けるだけでなく、味方射弾を避けるという意味もあります。いくら高性能な防空システムをそろえても、実際に使うためには、地上の被害を減らす防空シェルターなどの防護設備や、防空警報を発出するためのシステムの構築など、複合的な整備が必要です。韓国の防空システムは「必要な時に」「必要な物が」揃えられなかったのです。

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夜間射撃するゲパルト。見た目は派手だが、現代の対空戦闘の交戦時間は数秒だ(画像:ドイツ陸軍)。

 韓国の問題はそのまま日本にも当てはまります。ウクライナ情勢や中国の動きを受けて昨年末、発表された防衛三文書にて、日本の防衛政策は大きく転換されました。装備品調達にも多くの予算が振り向けられることになったものの、「必要な物を必要な時に必要なだけ」という視点からの評価も必要です。

 時間と費用をかけて開発した高性能兵器であっても、役に立たなかった例はいくらでも挙げられます。かといって無人機が脅威だからコスパに優れた自走対空砲を導入しろ、というのも、防空シェルターひとつないのにナンセンスな話です。

 限られた資産の中で優先順位をどうするのか。「必要な物を必要な時に必要なだけ」というのは、頭で分かっていても簡単なことではないのも確かです。

【了】

【画像】散らばる薬莢 毎分550発! 射撃後の「ゲパルト」

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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