新ジャンル航空機「LSA」やっと日本で許可… 国産ダメ!? 航空行政が周回遅れな“理事国”日本の実態

高性能な日本製エンジンが小型機で重用されているのに…

 残念ながら、日本は航空の分野では完全に後進国に脱落してしまいました。その結果、安全基準など新たな国際標準の策定作業には参加することができません。この状態をマラソンにたとえると、日本は先頭集団を遠くに眺めてかなり後ろから追いかけている状況と言え、加えてその差は縮まるどころか広がりつつあります。

 先頭集団を構成している北米と欧州、ブラジルなどがルールを決め、それを従属的に受け入れることしかできないのが今の日本です。ICAO理事国としてはとても恥ずかしい状態といえます。この状態から日本が航空先進国に返り咲くにはどうしたらよいか。それには先頭集団と同じ制度や基準を一日でも早く受け入れることしかないのです。

Large 230118 lsa 04

拡大画像

南アフリカを本拠とするスリング・エアクラフト社製のLSA「スリング2」。エンジンは出力100馬力のROTAX社製「ROTAX912iS」を搭載(画像:スカイクリエーション)。

 まず着手すべきは、航空人口の増加とルール・メーキング(制度設計)の可視化です。これらを避けて通ることはできません。航空先進国では、案件ごとにルール・メーキング委員会が組織され議論、検討、改定案の作成が行われています。メンバーの人選や会議の内容もすべて公開です。

 自動車では電動化が急速に進んでいますが、航空機の分野ではまだまだレシプロエンジンの時代が続きます。世界の航空機ユーザーは信頼性が高く高性能な日本製エンジンが航空機用に製品化されることを待っています。昨年、小型航空機の共同研究を発表した新明和工業とヤマハ発動機に対して、全世界の小型機ユーザーから熱い視線が注がれているのに、日本ではあまり知られていません。

 総2階建ての超大型機エアバスA380のパイロットも、最新鋭のステルス戦闘機F-35のパイロットも、初めて乗る航空機は小型の単発プロペラ機です。つまり、多くの優秀な操縦士と整備士を育成するためには、小型機の普及が欠かせないと言えるでしょう。そして、新たな産業政策として航空機産業の育成や、航空運送業の国際競争力を強化するといった面でもLSAを実用機として普及させることは必須です。

 筆者としては、今回の通達に留まることなく、一日も早い抜本的な法改正が実行されることを望んでいます。

【了】

【え…これダメなの?】特殊は皆無な「LSA」を隅々まで見る(写真)

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 慎重な事は良いところもあるど、
    日本は早く行政を若返えさせる
    必要がある。
    既に、あらゆる産業が、アジア諸国にも遅れを取り始めている。
    ビジネスジェット機産業は、アメリカで企業化したHONDAが台頭となり、日本に固執している三菱はドボン…
    良い例だと思います。