【鉄道のある風景今昔】いよいよ迫る渓谷 小私鉄の苦悩を物語る? 野上電鉄の記録その3 終点から線路が…

野上電鉄の最終回は、紀伊野上~登山口間を紹介します。途中、貴志川に沿って走る区間は絶景でしたが、過去には水害に悩まされたこともあったそう。終点の登山口駅では、延伸を計画した方向へ線路が続いていました。

この記事の目次

・貴志川沿いが同線一の景勝地?
・紀伊野上駅 実は「たま駅長」の駅から近い
・紀伊野上駅から動木駅へ
・タイムスリップしたかのような駅舎再び 動木駅
・終点、登山口駅へ

【画像枚数】全18点

貴志川沿いが同線一の景勝地?

 野上電気鉄道の3回目は、途中の紀伊野上駅から終点の登山口駅までの風景を紹介していきます。前回も書きましたが、野上電鉄線の線路や架線など鉄道設備の規格は全体的に低く更新もなされていなかったので、昔日の設備のまま残っており、訪問者の眼から見ると魅力的なものに映りました。

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紀伊野上駅は、ここまでのミニマムレベルの駅舎とは異なり、比較的しっかりとした駅舎が建っていた。これは1916年の部分開業時に終点であったことも要因だろう。構内には貨物側線も残っており、保線用の無蓋貨車がよく止まっていた。1993.6.27(写真:宮下洋一)。

 起点の日方駅から紀伊野上駅までの8.8kmは、途中に数か所の鉄橋があるものの、ほぼ平坦線の田園風景の中を走っていきました。しかし紀伊野上駅を出ると、貴志川に沿ってちょっとした渓谷美を感じさせる区間が龍光寺前駅まで、途中の動木(とどろき)駅を挟んで続きます。この区間が野上電鉄では一番の景勝地であろうと思います。

 龍光寺前駅を発車すると再び平坦な地形となり、そしていよいよ山が迫って、この先は線路を敷設するのが大変そう――そんな場所が終点の登山口駅でした。同駅は開業時「生石口駅」とされ、生石山への登山口としてバスが連絡していました。

 登山口駅から先も何度か延長しようと試みられたようですが、結局 延長開業は叶わず、駅の線形だけが開業時からの野上電鉄の野望と挫折を知る痕跡となっていました。

 それでは、紀伊野上駅から順に駅舎などを見ていきます。

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Writer: 宮下洋一(鉄道ライター、模型作家)

1961年大阪生まれ。幼少より鉄道に興味を持つ。家具メーカー勤務を経て現在はフリー作家。在職中より鉄道趣味誌で模型作品や鉄道施設・車輌に関する記事や著作を発表。ネコパブリッシングより国鉄・私鉄の車輌ガイド各種や『昭和の鉄道施設』・心象鉄道模型の世界をまとめた『地鉄電車慕情』など著作多数。現在も連載記事を執筆中。鉄道を取り巻く世界全体に興味を持つ。

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