【鉄道のある風景今昔】模型のお手本になる? 野上電鉄の記録その2 郷愁の風景になぜか新しすぎる架線柱

野上電鉄の2回目は、重根~八幡馬場間を紹介します。思わず模型にしたくなるような古い駅舎、一面の田んぼの中を行く戦前の電車、そしてそんな風景に似つかわしくない真新しい架線柱。和歌山の小私鉄の記録です。

この記事の目次

・和歌山の小私鉄 3か所の交換可能駅があったものの…
・重根駅 変電所の意匠に目を見張る
・タイムスリップしたかのような紀伊阪井駅
・田園風景の中、野上中駅
・北山駅 架線柱を立て直す気だったのか…?
・隣駅近し八幡馬場駅

【画像枚数】全17点

和歌山の小私鉄 3か所の交換可能駅があったものの…

 野上電気鉄道の2回目は、連絡口駅を発車後、八幡馬場駅までの味わい深い沿線の風景や駅舎などを紹介しようと思います。野上電鉄線の線路や架線などの鉄道設備の規格は全体的に低く、ミニマムなものでした。その分、昔日の鉄道の設備が残っており、訪問者の眼には魅力的なものに映りました。

 全線11.4kmのうち、途中の紀伊野上駅までの8.8kmは途中で数か所の鉄橋はあるものの、ほぼ平坦な田園風景の中を走っていきます。

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登山口駅方向から見た重根駅の構内。昼間はここ重根駅で全ての電車が交換していた。ほぼ全ての列車が交換するのにもかかわらず、構内の配線は一線スルーになっていた。1993.6.26 重根(写真:宮下洋一)。

 途中に重根(しこね)、北山、紀伊野上と3か所の交換駅がありましたが、私が訪問した1990年代初頭は重根と紀伊野上の2駅で列車交換していました。なお紀伊野上駅での交換は朝夕時間帯のみ、日中は重根駅で交換していました。途中の北山駅ではすでに行っていなかったので、交換駅はかなり日方駅寄りの1か所だけであり、随分と上下列車のバランスを欠いた印象でした。

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Writer: 宮下洋一(鉄道ライター、模型作家)

1961年大阪生まれ。幼少より鉄道に興味を持つ。家具メーカー勤務を経て現在はフリー作家。在職中より鉄道趣味誌で模型作品や鉄道施設・車輌に関する記事や著作を発表。ネコパブリッシングより国鉄・私鉄の車輌ガイド各種や『昭和の鉄道施設』・心象鉄道模型の世界をまとめた『地鉄電車慕情』など著作多数。現在も連載記事を執筆中。鉄道を取り巻く世界全体に興味を持つ。

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