“姉”も解体先決まらず世界中を漂流 フランス空母「クレマンソー」アスベスト問題で拒否られた「サンパウロ」の前例
退役から10年以上も解体先決まらず “幽霊船化”
35年以上にわたって第一線で活動し続けた「クレマンソー」は1997年に退役しますが、ここからトラブルに見舞われるようになります。断熱材などとして船体内部に多用されていたアスベストが総計で700~1000tあると問題になったのです。
まず、「クレマンソー」はスペインの会社に売却され、同地でアスベスト処理を行う予定でしたが、その後、安価で行えるトルコで処理する計画へと変更されます。ただ、これが無許可の決定であったことからトルコ政府に受け入れを拒否され、フランス国内でアスベスト除去作業を行う結果に。フランス政府位はこのときの処理で、アスベストを45tまで減らしたと主張しました。
その結果、2005年に「クレマンソー」は、インド西部グジャラート州にある世界最大の船舶解体場であるアランへ向かったものの、ここでも2006年1月6日にインド最高裁判所がアスベストの残存量について確実な情報がなく、有害廃棄物の移動に関するバーゼル条約に違反する疑いがあると判断。これを受けインド政府は「クレマンソー」が自国領海に入るのを拒否します。
結果、シラク大統領は「クレマンソー」をフランスに引き返させたのです。なお、同艦はインド政府の判断以前に環境保護団体の抗議と妨害に会っており、スエズ運河付近で立ち往生していました。
2006年にフランスへと戻ってきた「クレマンソー」は、手つかずのままブレスト港に係留され長らく幽霊船状態で放置され続けます。その処遇が決まったのは3年後のこと。2009年2月にイギリス北東部のハートルプールの造船所で解体されることとなりました。ちなみに、イギリスでも入港反対の抗議を受けたものの、ここでキチンと解体されました。
就役当時、「クレマンソー」と「フォッシュ(サンパウロ)」はフランス政府や海軍などから大きな期待をかけられ、その後長らく第一線で活動したことからもわかるように現役中は世界中をまたにかけて任務に従事し続けた「名艦」です。
しかし、1960年代と1990年代ではアスベストの捉え方がまるっきり真逆になってしまいました。就役時点では問題ないと判断されていたアスベストが、最終的には世界的に「厄介者」扱いへと変貌していたのです。その結果、姉妹揃って最期は不幸な境遇となってしまいました。
とはいえ、その処分方法は“姉”の方は解体だったのに対し、“妹”は沈没処分と差があるのも事実。紆余曲折を経ながらも無事に解体された分、「クレマンソー」の方が、運がよかったといえるかもしれません。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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