「インバウンド復活」に賭けるバス業界、実際どう?何が必要? 日本人より「交通を駆使」する外国人

周遊ニーズは「乗り放題」でつかみ取れ?

 白馬における夜のデマンドタクシーは、実は宿側の課題も解決するものです。「スキーブーム」終焉から30年。ペンションのオーナーの高齢化が進み夕食作りは負担が大きく、「泊食分離」は渡りに船でもあります。

 こうしたデマンド交通は、「訪問先ごとに専用アプリをインストールする」のが壁となり、多くの地域で定着していません。しかし白馬では、滞在期間の長さに加え、飲食店への送迎業務が負担となっていた宿泊施設が積極的に告知してくれることが功を奏し、事業の継続と有料化が決定しました。

 一方、温泉や歴史的景観などを売りとする周遊型の観光地へは、空港からの直行バスの成功事例はほぼありません。代わりに、最寄りの大都市から、公共交通を乗り継いで快適に旅行できる「観光回廊(コリドー)」の形成が肝心です。高速バス路線や現地の交通の充実、およびそれらを含む観光用の乗車券設定や告知が重要となります。

 湯布院や高千穂など九州内の高速バス・路線バスが乗り放題となる「SUNQパス」は、いわば「面」の乗車券です。一方、名古屋~飛騨高山~白川郷~金沢を中心とする観光回廊「昇龍道」で、各区間の高速バスの乗車券、現地の路線バスフリー乗車券などをセットにした「昇龍道フリーバスきっぷ」は「線」の乗車券です。さらに公共交通と現地での体験型アクティビティなどをパッケージ化した、名鉄観光サービスの「みつけたび」シリーズも中部地方を手始めに他地方にも広がりつつあります。

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飛騨高山の高山濃飛バスセンター。コロナ前は外国人旅行客であふれていた(成定竜一撮影)。

 このうち「SUNQパス」の強みは、業界用語でいう「手離れがいい」点です。現地の旅行会社は券を売るだけでよく、高速バスの座席予約は旅行者自身に任されています。販売が簡単なため旅行会社が大量に売ってくれるのです。これは、九州内の高速バス路線網が充実していて、満席でもすぐに次便があるなど、現場対応は大変とはいえ、「そのとき任せ」できるからこそ可能です。

 他の地方では専用の予約システムをわざわざ構築した例もありますが、FITは緻密に旅程を組んで事前に予約してくれたりはしないものです。

【羽田空港に爆誕】ほぼ外国人向け「マイクロバスの高速バス」(写真で見る)

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