新幹線超のスピードで飛ぶ“軽自動車”!? 「世界最小のジェット機」未だに愛されるワケ
本格販売前に約1万7000機の予約を受注
ビーディーはこの機体をキット形式のホームビルト機としてだけでなく、FAA(アメリカ連邦航空局)の型式認定を取得することで完成機としても販売する計画を立てます。こうして生まれた「BD-5マイクロ」と命名された原型機は1971年に初飛行しましたが、飛行性能は発表値に及びませんでした。
原因を探ると、機体の抵抗が計算値よりも大きかったことが判明します。原型機は明らかにパワー不足で、ビーディーは十分な出力を得られるエンジンを物色しました。いろいろなエンジンが検討された結果、選定されたのは、ともに出力70馬力のドイツ・ハース社製もしくは日本ゼノア社製のエンジンでした。
これら代替エンジンの飛行テストが行われていた最中、ビーディーはモーターグライダーのブースターに使われている小型ジェットエンジンをBD-5に搭載することを思いつきます。これがジェット機「BD-5J」として完成、1973年に初飛行に成功しました。
のちに「BD-5J」は世界最小のジェット機としてギネス認定もされ、1980年代から90年代にかけてアメリカの大手ビールメーカーのキャンペーン飛行機にも起用されると、全米各地の航空ショーでデモフライトを披露するまでに至ります。
こうして、映画やCM出演に続き航空ショーにまで出るようになった「BD-5」でしたが、そうした華やかな活躍とは裏腹に自家用小型機としては多くの問題を抱えていました。
そのひとつが最適なエンジン選定の遅れです。ただ、前出のような派手な露出、そして斬新な形状と手ごろな価格は多くの小型飛行機愛好家の興味をそそります。結果、「BD-5」は爆発的に売れ、ホームビルト機として5000機、完成機として1万2000機の注文を獲得したのです。
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